取り残された私は、
とりあえず学校へと向かうことにした。
私の未練は阿部くんに想いを伝えられなかったこと。
まずはその未練を断ち切るために、できることをやってみよう。
謎のポジティブ思考が発動し、
私は浮遊しながらショートカットで学校に向かった。
学校に着くと、私は定位置の校門の影に身を潜めた。
生前、毎朝早くにここでスタンバっていたからか、やっぱり落ち着く。
浮遊霊になったとはいえ、阿部くんにいざ告白すると決めた途端、胸がドキドキとしてきた。
もう心臓は止まっているはずなのに。
いつも通り元気な阿部くんの声が聞こえ、私は意を決して彼の前に飛び出した。
しかし、次の瞬間。
「「バチン!!」」
私の身体は見えない壁のようなものに、弾き飛ばされてしまった。
尻餅をついた私は、恐る恐る目を開ける。
すると身体の一部が薄れ、
霧散するように淡く消えかかっていた。
阿部くんに目を向けると、
まるで後光のように眩い光が彼を包みこんでいた。
それは決してイケメンで眩しいという
比喩表現ではなく、物理的に目にダメージを
与えるほどの光だった。
眩しい光に堪えながら目を凝らしてみると、
阿部くんの背後に髪の長い女の人のような影が見えた気がした。
でも眩い光のせいで顔ははっきりとは見えない。
そうして何度か阿部くんへ近づこうとしてみたものの、そのたびに弾きとばされ、身体がチリチリと削られてしまう。
少し時間が経てばまた戻るけど、この調子では告白なんて到底無理。
もしかしたら、
この光は阿部くんを守護しているのかもしれない。
ということは、あの髪の長い女の人は
女神だったりして?
まさに前途多難。
途端に、49日というタイムリミットが
恐ろしく短く感じた。
私は途方に暮れることしかできなかった。
———授業中。
気づけばいつもの癖で、自分の席に座っていた。
ホームルームの出席確認では「大羽圭子」は欠席扱い。
当たり前だけど、返事をしてもみんなには何も聞こえていないようだった。
なんだかとても寂しくなって、
初めて自分の死に実感が沸いた。
やっと頭が現実に追いついてきたのだ。
無意識のうちに教室の中をうろうろと彷徨っていた。
授業中に教壇に立つ先生の前で、手を振ってみる。
そんなことをすれば本来なら問題児扱いだ。
だけど今ばかりは「早く座れ!」と先生からの罵声を期待してしまう。
でも期待は大外れ。
先生は何も気づかずに授業を進めた。
クラスメイトも、私の存在には気づかない。
目の前で、本邦初公開の変顔だって披露してみた。
だけどどれも不発に終わる。
そんな時、
「ぷはっ」と小さく吹き出す声が教室に響いた。
その方向に背線を向けると、大嫌いなアイツ、
鷹宮悠馬とバチッと目が合った。
















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。