バイト三昧の土日があけ、月曜日。
当たり前のように寝坊しそうになる鷹宮悠馬を大声で叩き起こし、私たちは学校へと向かっていた。
登校中、眠そうに歩く鷹宮悠馬の上をふわふわと浮きながら小言をこぼす。
校庭で朝練をする阿部くんの背中が見える。
浮遊霊になったばかりの頃、
阿部くんの眩い光に弾き飛ばされたことを思い出す。
その眩しすぎる光のせいで阿部くんの顔すら
まともに見えなくなってしまったのだ。
だけど今は、はっきりと阿部くんの姿が捉えられ、
その背後に浮遊している光輝く人の姿もしっかりと見ることができた。
パチリと目があって、慌てて鷹宮悠馬の影に隠れる。
気だるそうにサッカーコートの方へと
歩いていく鷹宮悠馬。
数メートルほど近づいた頃、阿部くんがこちらに気づいて手を振った。
正確には鷹宮悠馬へ向けて。
私はだべっている鷹宮悠馬の背後に隠れながら、阿部くんの背後の人に背線を向ける。
色素の薄い長く綺麗な髪に、白い肌。
驚くほど整った顔立ちに、印象的なぱっちり二重の瞳。
そして背中には真っ白で大きな翼が生えており、
額には「神」と光輝く文字が書かれてある。
まるで尊い存在である阿部くんを見ている時のような、不思議な感覚に陥った。
ぱっと笑顔になった阿部くんの背後の女性が、
ふわりと浮遊して私の目の前にやってきた。
その瞬間、ぎゅっと両手を握られ私は叫び声をあげた。
この前悪霊が光に当たって消滅したように、
触れられれば私も消えてしまうかと思った。
だけど、身体にはなんら異変はない。
にっこりと微笑む彼女は、守護神と名乗った。
申し訳なさそうに、マリア様は首を傾げる。
マリア様曰く、守護霊と守護神は同じような
善の霊体であり、大きな括りで言うと同じような
存在だという。
契約前のただの浮遊霊だった私は、
力が弱く神力に当てられて消滅しかけたというわけだった。
阿部くんのご尊顔も見れるようになったし、私はほっと胸を撫で下ろした。
一瞬、迷ったけど事情を知る人は多い方がいい。
私は意を決して、49日のタイムリミットと未練について話してみることにした。
私が話し終わる頃には、マリア様は号泣していた。
まるで自分のことのように涙を流す彼女を見て、
阿部くんの守護神らしいなと思ってしまった。
私はマリア様からいくつか方法を教えてもらった。
と意気込む私に、マリア様は嬉しそうに微笑んだ。
気づけば、阿部くんはとっくに練習に戻っていた。
少し離れたところで空気を呼んで待っていたアイツが、痺れを切らしたのか私を呼びに来た。
鷹宮悠馬は眩しそうに目を細めて、若干怯えている。
鷹宮悠馬はほぼ目を開けず、返事をした。
私がお礼を言うと、マリア様は柔らかい笑顔で手を振ってくれた。
マリア様の寂し気な声は、
この時の私には届かなかった。


















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!