第9話

女神様は協力者?
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2026/06/22 09:00 更新
 バイト三昧の土日があけ、月曜日。
当たり前のように寝坊しそうになる鷹宮悠馬を大声で叩き起こし、私たちは学校へと向かっていた。

鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
こんな早起きしたことねーよ……
大羽 圭子
大羽 圭子
阿部くんは
もう学校ついてる時間だよ!
私に協力してくれるって
言ったからには、これからは
早起きしてもらうからね
登校中、眠そうに歩く鷹宮悠馬の上をふわふわと浮きながら小言をこぼす。
大羽 圭子
大羽 圭子
あ!阿部くんだ!
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
え、どこだ?
ってあんな遠くにいるのに
よく気づいたな

校庭で朝練をする阿部くんの背中が見える。

大羽 圭子
大羽 圭子
あれ……?見える!
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
どうした?
大羽 圭子
大羽 圭子
阿部くんが見える!!

浮遊霊になったばかりの頃、
阿部くんの眩い光に弾き飛ばされたことを思い出す。

その眩しすぎる光のせいで阿部くんの顔すら
まともに見えなくなってしまったのだ。

だけど今は、はっきりと阿部くんの姿が捉えられ、
その背後に浮遊している光輝く人の姿もしっかりと見ることができた。
大羽 圭子
大羽 圭子
(綺麗な女の人……)
???
???
……あら?
大羽 圭子
大羽 圭子
わっ!!
パチリと目があって、慌てて鷹宮悠馬の影に隠れる。
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
大丈夫かよ
さっきから挙動不審だけど
大羽 圭子
大羽 圭子
ごめん
でも今、阿部くんの背後の
光ってる人と目が合って……
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
あ〜〜あれね
すっげえ光ってるから
怖くてあんまり
見ないようにしてたんだけど
あれってやっぱり人なの?
大羽 圭子
大羽 圭子
うん。すっごい綺麗な人
もっと阿部くんに近づいてくれない?
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
……しかたねーな

気だるそうにサッカーコートの方へと
歩いていく鷹宮悠馬。

数メートルほど近づいた頃、阿部くんがこちらに気づいて手を振った。

正確には鷹宮悠馬へ向けて。
阿部 大吾
阿部 大吾
鷹宮おはよー!
珍しいじゃん
こんな朝早くに学校来るなんて
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
まあな。
てか、阿部って毎朝こんな早いの?
阿部 大吾
阿部 大吾
部活あるやつは普通じゃね?
朝練でみんな早く来てるし
鷹宮が遅いだけだろ
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
うるせー
私はだべっている鷹宮悠馬の背後に隠れながら、阿部くんの背後の人に背線を向ける。


色素の薄い長く綺麗な髪に、白い肌。

驚くほど整った顔立ちに、印象的なぱっちり二重の瞳。

そして背中には真っ白で大きな翼が生えており、
額には「神」と光輝く文字が書かれてある。
???
???
……
大羽 圭子
大羽 圭子
美しすぎる……
まるで尊い存在である阿部くんを見ている時のような、不思議な感覚に陥った。
???
???
まあ!
あなた、守護霊になったのね?
やっと話ができるわ!

ぱっと笑顔になった阿部くんの背後の女性が、
ふわりと浮遊して私の目の前にやってきた。

その瞬間、ぎゅっと両手を握られ私は叫び声をあげた。

大羽 圭子
大羽 圭子
ぎゃあああ!
消滅するーー!!
この前悪霊が光に当たって消滅したように、
触れられれば私も消えてしまうかと思った。

だけど、身体にはなんら異変はない。

大羽 圭子
大羽 圭子
……あれ?平気だ
マリア様
マリア様
私はマリア
大ちゃん……この阿部大吾の
守護神をしているのよ
にっこりと微笑む彼女は、守護神と名乗った。
大羽 圭子
大羽 圭子
しゅごしん……か、神!?
と言うことは女神様?
マリア様
マリア様
女神様だなんて嫌よ
マリアって呼んでくれない?
大羽 圭子
大羽 圭子
じゃあ間をとって
マリア様で……
マリア様
マリア様
うーん、「様」はつけなくても
いいんだけどなあ……
あなたの名前は?
大羽 圭子
大羽 圭子
お、大羽圭子っていいます
マリア様
マリア様
じゃあ圭子ちゃんね!よろしく!
それより、驚かせてしまったわね?

申し訳なさそうに、マリア様は首を傾げる。

大羽 圭子
大羽 圭子
い、いえ!
この前は弾かれて近づけなかったので、
ちょっとびっくりしただけで……
マリア様
マリア様
もう大丈夫よ
あなたが守護霊になったから
大羽 圭子
大羽 圭子
え?
マリア様曰く、守護霊と守護神は同じような
善の霊体であり、大きな括りで言うと同じような
存在だという。

契約前のただの浮遊霊だった私は、
力が弱く神力に当てられて消滅しかけたというわけだった。
大羽 圭子
大羽 圭子
じゃあもう消滅の心配はないんですね!
守護霊になってよかった……

阿部くんのご尊顔も見れるようになったし、私はほっと胸を撫で下ろした。
マリア様
マリア様
ずっと気になっていたのだけど
大ちゃんに何度も近づこうとしてたわよね?
何か理由があるの?
大羽 圭子
大羽 圭子
あ……それは……
大羽 圭子
大羽 圭子
(話しても大丈夫だよね?)
一瞬、迷ったけど事情を知る人は多い方がいい。

私は意を決して、49日のタイムリミットと未練について話してみることにした。

マリア様
マリア様
……そんなことがあったなんて
私が話し終わる頃には、マリア様は号泣していた。

まるで自分のことのように涙を流す彼女を見て、
阿部くんの守護神らしいなと思ってしまった。

マリア様
マリア様
私、圭子ちゃんに協力する!
大羽 圭子
大羽 圭子
え!?
マリア様
マリア様
だって可哀想だもの
大ちゃんは霊感ゼロなのよ!
マリア様
マリア様
私から何度話しかけても
なーんにも感じ取らない
くらいなんだから!
大羽 圭子
大羽 圭子
そうなんですか?
じゃあどうしたら……
マリア様
マリア様
大丈夫
干渉できなくても
想いを伝える方法は
たくさんあるわ
私はマリア様からいくつか方法を教えてもらった。
大羽 圭子
大羽 圭子
ありがとうございます…!
やってみますね!

と意気込む私に、マリア様は嬉しそうに微笑んだ。

鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
おーい、いつまで喋ってんだよ
気づけば、阿部くんはとっくに練習に戻っていた。
少し離れたところで空気を呼んで待っていたアイツが、痺れを切らしたのか私を呼びに来た。

マリア様
マリア様
あなたとは初めて話すわね、鷹宮くん
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
うわっ!!
話しかけてきた……!

鷹宮悠馬は眩しそうに目を細めて、若干怯えている。

マリア様
マリア様
ごめんね
ずっと話しかけようか迷ってたんだけど
なんか怖がらせちゃ悪いかと思って
マリア様
マリア様
いつも大ちゃんと
仲良くしてくれてありがとう
私はマリアよ、よろしくね
鷹宮 悠馬
鷹宮 悠馬
うす……
鷹宮悠馬はほぼ目を開けず、返事をした。

マリア様
マリア様
じゃあそろそろ行くわね
大羽 圭子
大羽 圭子
マリア様ありがとう!

私がお礼を言うと、マリア様は柔らかい笑顔で手を振ってくれた。

マリア様
マリア様
……応援してるわ圭子ちゃん
マリア様
マリア様
これで、いいのよね……
大ちゃんにはそろそろ
前に進んでもらわなきゃいけないもの

マリア様の寂し気な声は、
この時の私には届かなかった。



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