真っ黒なモヤを纏っている幽霊。
ただの浮遊霊とは違ったその様相に、
この存在がこの世にいてはいけないものだと察する。
言葉にもならない奇声を発しながら、
悪霊は鷹宮悠馬に襲いかかる。
いつの間にか私は
黒い幽霊の腕らしき場所をぐにっと鷲掴んでいた。
喜んだのも束の間、こちらの存在に気づいた悪霊が、
私の方へと殴りかかってくる。
とっさに拳は避けられたけど、
このままだと私までやられてしまうかもしれない。
ただでさえ、運動とは縁のない人生だったのに……。
その時、ふと思い出したのは、阿部くんの眩しい光だった。
あの光に弾かれた時、身体の一部がダメージを負い、
危うく霧散しかけた。
私は悪霊を、阿部くんがいるサッカー部の方へと、
無理やり連れていくことにした。
連れていく、
というより誘き寄せるという方が正しいか。
私を追いかけてくるように、悪霊を煽ってみる。
黒いモヤの奥には、女性のように長い髪が見える。
正直顔までは見えなかったが、
悪霊はまんまと私の言葉に反応し、
鷹宮悠馬を置いてこちらへと着いてくる。
ふらふらとおぼつかない足取りで着いてくる悪霊を、
サッカー部が活動する校庭へと誘き出すことに成功した。
そして私は、悪霊の腕を再びガシッと掴んで、
遠くからでもわかるほど眩い光を放つ阿部くんに向かって走り出す。
ふんっ!と力を込めて、
悪霊を阿部くんの光へと投げつける。
ブシュッ!!と光に焼かれるような音が鳴り、
悪霊は塵になって消滅した。
阿部くんは悪霊の存在に気づきもせず、
部活に集中している。
久しぶりに全速力で走った私は、
今になって浮遊霊だったことを思い出した。
———教室に戻ると、
鷹宮悠馬が床にへたり込んでいた。
なぜかしおらしくお礼を言われ、
くすぐったい気持ちになる。
私は無意識に手を差し伸べていた。
そしてコイツも当たり前のように
手を取ろうとしたのが悪かった。
スカッ!!
見事に手をすり抜け、鷹宮悠馬は体勢を崩す。
びっくりした私も後ろへと倒れてしまって、
なぜか床ドンの体勢に。
(死後4日経過/お迎えまであと45日)

















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。