第16話

賑やかな時間
879
2022/09/25 23:00
もも
もも、類くんみたいな大人な男子がいい!
クラスの男子と取り換えてほしい!
もも
もものクラスに来ませんか!?
ふゆき
姉ちゃんを追試で一発合格させた人?
ふゆき
もはや偉人じゃん、すご
ゆり
ゆりもあそぶ~!!
ゆり
だっこは~?
野間しおん
野間しおん
ちょっと! 静かにしてよ~~!
時刻は午後六時。場所は我が家のリビング。
こうなることは、分かってたはずなのに。
野間しおん
野間しおん
ごめんね、園田くん……
園田 類
園田 類
お前が元気に育った理由がよくわかる家だな
腕に私の妹二人をくっつけたまま、園田くんが表情も変えずにそう言った。
あの後、クラスメイトを一人夕食に誘いたいとお母さんに連絡を入れたら、即了承の返事。
家に帰ってドアを開けた瞬間、お出迎えしてくれたももの叫び声から始まり
家の中はたちまちいつも以上に騒がしくなってしまった。
もも曰く、私が連れてくるのは女友達だと思っていたらしい。
それが男子で、しかも園田くんのようなイケメンだったので、この大騒ぎ。

リビングのソファに座る園田くんの左右の腕にしっかりしがみついている、ももとゆり。
ふゆきはダイニングの椅子に座って、それをニヤニヤ見ている。
野間しおん
野間しおん
えっと……とりあえず紹介するね。
私の弟、二つ下で中学三年生のふゆき
ふゆき
ども
野間しおん
野間しおん
園田くんの右腕にくっついてるのが、六つ下で小学五年生のもも
もも
ももです! よろしくお願いします!
野間しおん
野間しおん
で、左腕にしがみついてるのが、四歳のゆり
一人ひとり紹介するたびに、園田くんはちゃんと本人たちを見ている。
クラスでは誰が何を話そうと、決して目を合わせなかったのに。
私の家族に対しては、人嫌いが発揮されていないみたいだった。
もも
ねぇねぇ類くん! どんな人がタイプ?
野間しおん
野間しおん
こら、もも!
もも
だって気になるじゃん~! お姉ちゃんも気になるでしょ?
ふゆき
ほんとマセガキだよな、ももは
いっちょ前なこと言うけど、精神はまだガキのくせに
もも
おにいだってクソガキじゃん!
ふゆき
はぁ? そんなことねぇし!
野間しおん
野間しおん
も~~~!! 喧嘩しない!
取っ組み合いを始めそうなももとふゆきを止めている間に、
いつのまにかゆりが園田くんの膝の上に座っている。
野間しおん
野間しおん
ちょっとゆり! も~ほんとにごめんね園田くん
園田 類
園田 類
いいよ、別に。そんなに重くないし
まだ騒いでいるももとふゆきを宥めていると、
やっとお母さんからご飯が出来たという声がかかった。
ふゆきが座っていたダイニングテーブルに並べられるカレー。
もも
もも、類くんの隣がいい! おにいどいて!
ふゆき
お前があっち行けばいいだろ
もも
あっちにはゆりがいるでしょ!
駄々を捏ねるももに、頭を抱える。
今日だけで何回頭を抱えればいいんだろう……。
お母さんの一言でようやくももとふゆきも大人しくなり、全員がいただきますと声を揃えた。
園田 類
園田 類
……夕飯はパンじゃないの
野間しおん
野間しおん
パンの時もあるけど……パンがよかった?
園田 類
園田 類
いや、普通のご飯も食べるんだなって
野間しおん
野間しおん
パンも普通のご飯だよ!
園田くんの素朴な疑問にすかさず反論すると、静かに笑われる。
何回見ても、園田くんの笑顔は慣れない。
いや! 嬉しいんだけど!
慣れない笑顔はドキドキしちゃうから心臓に良くない!
もも
類くん、美味しい?
ふゆき
お前がつくったんじゃないだろ
もも
いいでしょ別に! あ、らっきょう食べる人??
食べ始めても、騒がしさはおさまらない。
というよりも、さっきよりもずっとうるさい。
野間しおん
野間しおん
(うるさすぎないかな……いやじゃないかな……)
こういう食卓に慣れてなさそうな園田くんが心配になってちらりと様子をうかがうと、
そこにあったのは私が思っていたような表情じゃなかったのでほっとする。
野間しおん
野間しおん
(よかった……)
嫌じゃないならよかった。
安心して、私も目の前のカレーを食べ始めた。




野間しおん
野間しおん
今日はありがとうね
デザートまで食べ終えると、外はすっかり暗くなっていた。
駅まで送ると言ったのに、大丈夫だと言われたので、家の前で見送ることにする。
ももとゆりもお見送りしたがったものの、
さすがに家の外にあの騒がしさを出すのはよくないのでお留守番してもらっている。
野間しおん
野間しおん
ごめんね騒がしくて……まさかあんなに騒ぐとは思わなくて……
園田 類
園田 類
経験したことない時間だった
野間しおん
野間しおん
そうだよね……
園田 類
園田 類
でも、ありがとう
園田 類
園田 類
昼以上に賑やかな食事は初めてだった。なんか、新鮮
そう言った園田くんは、また手首を握ってた。
園田 類
園田 類
じゃあ
野間しおん
野間しおん
あ、そ、園田くん!
そんな園田くんをそのまま帰すのはなぜかダメな気がして、
私は思わず彼の手を取った。
園田くんが自分の手首を掴むように、ぎゅうっと強く、手を握る。
野間しおん
野間しおん
また来て! 絶対、絶対だよ!
考える前に口から出てきた言葉。
賑やかすぎるのが嫌だったかなとか、そんな不安や遠慮はもうなかった。
また来て、食事を楽しいものだって覚えてほしい。

必死な私の前で、ぽかんと驚いてた園田くんは、ゆっくりと笑顔になった。
園田 類
園田 類
うん。またな、しおん

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