第15話

初めて見た笑顔
909
2022/09/18 23:00
園田 類
園田 類
父も母も、俺のことを子供だなんて思ってない。
身近にいる、使いやすい道具だって思ってる
そう話した園田くんは、痛いくらいに手首を握って俯いてた。
でも、それでも声は震えてない。

きっと、心の底からそう思ってるんだ。
事実として捉えてるから、悲観することも無いんだ。
でもそれって、悲しすぎる。
野間しおん
野間しおん
ちがう、違うよそれは
野間しおん
野間しおん
子供は道具なんかじゃない!
園田 類
園田 類
……そう思う親もいるってこと。実際、俺は母に何度も父の前で盾にされた
園田 類
園田 類
俺に触れる時なんて、その時くらいしかなかった
野間しおん
野間しおん
ひどい……自分の子供を……園田くんを何だと思ってるの
園田 類
園田 類
子供だとも思ってないと思う
だから、俺が描いた家族の絵を破り捨てた
園田 類
園田 類
うぬぼれるなよって
園田くんの親御さんを見たことはない。
話を聞いたのも今日が初めてだ。
他人の両親を批判する権利はないかもしれないけど、あんまりだよ。
野間しおん
野間しおん
どんな理由があっても、人が頑張った絵を破るなんてひどいよ!
絵って、色んな思いが詰まってるんだから!
野間しおん
野間しおん
その人にしか描けない唯一無二のものなのに!
私だって絵を描くからわかる。
どんな構造にしようか、どんな色を使おうか。
いっぱい考えて悩んで、自分が思い描いた世界を描くにはすごく時間も労力もかかる。
小さな園田くんも、きっとそうやって自分だけの一枚を完成させたんだ。
野間しおん
野間しおん
頑張って描いたんでしょ? 頑張ったんだよね!?
だからご両親に見せたかったんだよね!? わかる、見てほしいもん!
野間しおん
野間しおん
それを目の前で破り捨てるだなんて最低! それに道具って何!?
野間しおん
野間しおん
園田くんは一人の人間だよ!
園田 類
園田 類
ふはっ
カッとなって叫んでいた私の耳に聞こえてきた柔らかい声。
園田 類
園田 類
俺以上に怒るじゃん
言葉を選ぶこともできないくらい感情的になっていた私は、
喋ることも忘れて園田くんを見た。

だって、だって、
あの園田くんが笑ってる……。
園田 類
園田 類
自分以上に怒ってるやつがいると冷静になるって本当だったんだな
野間しおん
野間しおん
……
初めて見た園田くんの笑顔は、綺麗だった。
はじけるような笑みじゃなくって、緩やかに口角が上がってる。
でも、目じりが少し下がっているような感じがして、柔らかい印象。
園田 類
園田 類
そんで急に黙るじゃん
ほんと、感情がころころ変わる
見つめられて、私は思わず制服の裾を握った。
野間しおん
野間しおん
(……初めて見る顔だからかな、少し緊張する)
初対面の人と喋っているみたい。
心臓がうるさくって、ほっぺたが少しだけ熱い。
園田 類
園田 類
ありがと
野間しおん
野間しおん
え?
園田 類
園田 類
なんか少し楽になった気がする
そう言った園田くんは、傍にあった机に腰かけた。
項垂れるように下を向いた彼は、もう手首を握ってなかった。
園田 類
園田 類
多分俺は、両親にお願いしたかったんだと思う。
絵本でよく出てくる家族みたいになりたくて、理想を描いた
園田 類
園田 類
でも現実はそうじゃない。それは、今はもう、痛いくらいにわかってる
野間しおん
野間しおん
園田くん……
園田 類
園田 類
自分は一人だって感じるから、食事の時間がすきじゃなかった。
大きいテーブルで一人で食べるのが、嫌だった
野間しおん
野間しおん
あ……もしかしていつもお昼ごはんが飲料ゼリーだったのも
食事の時間を早く終わらせるため?
園田 類
園田 類
……やっぱりエスパーだったりする?
軽く笑った。
その表情は、いつも見てるものよりもずっと柔らかい。
園田 類
園田 類
だけど、今は楽しいと思ってる
野間しおん
野間しおん
えっ
園田 類
園田 類
昼だけだけど
そう言った園田くんに、心がポカポカした。
だって、お昼ってことは私や水瀬くんと食べるから?
賑やかな食事の時間を知ったからかな?
……なんて、ぬぼれかもしれないけど。

でも。
野間しおん
野間しおん
ねぇ園田くん! 今日の夜、うちでご飯食べない?
食事は楽しいものなんだよって知ってほしい。
園田くんにもっともっといっぱい食べてほしい。

私の言葉に驚いていた園田くんは、戸惑いがちに、でも、小さく頷いてくれた。

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