玄関の前でいつもと同じ行ってらっしゃいのハグ
あなたは
7:30出勤だからいつも寝ぼけながら送り出して、
その後ベットに戻るのが僕のモーニングルーティン。
毎日幸せ。
あなたは僕に幸せをくれた。
でも、あなたが僕に最初にくれたのは幸せじゃなかった。
練習生として単身韓国に渡ってすぐ、チャニヒョンと出会った。
同じくAustralia出身のヒョンは、
僕の良き理解者で、
当時から練習生をまとめるリーダー的存在だった。
でも今の物腰柔らかなヒョンとは違って、
デビューに貪欲で、こだわりと威厳を持っていた
もちろん優しかったけど。
そんなヒョンを怖がったり、近寄り難く思っている人もいた中で、チャニヒョンと気さくに話していた人。それがあなただった。
気さくなヌナ、そんな印象だった。
すれ違う人すれ違う人に声を掛けられていて、
友達のたくさんいるタイプ。
でも、チャニヒョンと話している彼女は一際愛嬌があって、悪態をつく口とは裏腹に、とても楽しそうに見えた。
気さくで笑顔の素敵なヌナに、正直惹かれた。
だから、次事務所で会ったら絶対声をかけようと、心に決めた。
でも、実際の僕は案の定小心者だった。
練習室から出てきたヌナ。
人懐っこいあなたヌナは他の練習生とも当然親しげにしていると思っていたのに、
ヌナは大勢の練習生が出てきたあとに、ひとりで出てきた。
結われた長い黒髪をほどくヌナは、
この前見た可愛らしいひととは別人に見えた。
話しかけられずに廊下につったっている僕をみつけたヌナは、
少し会釈をしただけで行ってしまった。
今日は気分が乗らないのか、
それとも僕には興味がないのか。
その答えはすぐにわかった。
エレベーターから出てきたチャニヒョンを見つけると、
それまできつく結ばれた口が開かれて、
パッと笑顔に変わった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!