僕の彼女は僕がStray Kidsであることを知らない。
多分バイトの忙しい大学生だとでも思っていると思う。
でも、別に隠しているわけじゃない。
彼女がアイドルに気付いても多分何も変わらないから。
カランカラン🔔
ここはあなたがバイトしているカフェ。
といっても大きいチェーン店の建ち並ぶ大通りの裏にあるこの店は、僕が知る限りいつも空いている。
どうしてずっとバイトを雇っているのか少し気になるくらいだ。
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1年くらい前、
あなたと出会ったのはカフェではなく、
駅前の横断歩道。
あんまりかっこよくないからこの話は人にはしたくない。
俺に気づいた女性に腕を掴まれて、
怖くて笑顔で返答することもできず、
かといってファンを強く振り払うこともできないでいた俺を見つけた彼女は、
と言いはなって女性を引き剥がすと、
いきなり走り出して俺をこのカフェまで連れて来てくれた。
カフェに着くと、僕をカウンターに座らせて、
ウエイター姿で戻ってきた。
フーフー
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ファンの応援に応えることに必死で、
アイドルとしての自分と、本当の自分の境目がわからなくなって、
すぐに悪意に変わるかもしれない一方的な好意に怯えていた当時、
純粋に人として普通に居られる
カフェが、僕にとってのホームになった。
じゃあ、なんでそんなかっこいいあなたが僕の彼女になったかと言うと、
簡単に言えば勢いだった。
カフェに通い始めて1ヶ月くらいたったとき、
カランカラン🔔
口からついて出た嘘に、自分でも少し驚いた。
多分
あなたに恋人ができるかもしれない状況と、
あなたの昔の恋人に繋がる発言に、
焦ったんだと思う。
でも、何より驚いたのは
ずっと余裕綽々としていた彼女が
顔を赤くして俯いていたことだった。
俯いていたかあなたは顔を上げて、
少し驚いた顔をした後、
いつもの余裕綽々とした表情に戻って
えくぼを作って言った。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!