授業が終わり学校を出ると、校門の前に三ツ谷がいた。
知らない顔をする三ツ谷にあなたは少し拗ねた顔をした。
ニヤニヤしている三ツ谷はあなたの手を引いて歩き出す。
あなたは不安な顔をしていた。
それに気づいた三ツ谷は心配そうに声を掛ける。
2人は歩いて、あなたの家の小さなアパートの前まで来た。
あなたが部屋に行こうとすると、三ツ谷がグッとあなたを止めた。
引き留めたあなたは心配なのか少し困った顔していた。
そう言うとあなたは三ツ谷の手を離して部屋に入る。
ガチャ…バタン
家に入ったあなたは母親がいるか確認する。
しかし、玄関には無数の靴が散らかっており、母親がどれを履いているかがからなかった。
聞こえるか聞こえないかぐらいの声で喋る。
しかし、部屋からは物音一つ聞こえない。
リビングに入ると、そこは酷く汚れていた。
食べ散らかした弁当のゴミなどが散乱していたのだ。
元々生活力が母親にないことは知っていたが、あなたの記憶にある部屋以上に今は酷い状態になっていた。
あなたはとりあえず、自分の財布と通帳を持って帰ろうと、隠しておいた場所まで移動した。
閉まっておいたはずの財布と通帳はどこにもなかった。
ガタンっ
物音がした方を見ると、冷たい目をした母親が立っていた。
しかも、その手にはあなたの財布と通帳が握られている。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!