奏汰ー
出先の帰り
なかなか出られない街に
心が踊っていた
直ぐに帰らなければいけない
わかっているけど……
何故か今日は遠回りをした
雨が振ってきた
手持ちの傘をさす。
人気のない通り
赤と黒にまみれた塊を見た
人……?
気がついたら駆け寄ってた
放った置けばいいのに、
昔の自分を見ているみたいで
放っておけなかった
男か……
ゆっくり顔を上げる
疲れきっている目、
絶望していて 何も感じない目。
どうにかしたかった
気が付けば傘をさしむけて
手を差し出していた
優しく微笑むと
彼は震える冷たくて大きな手で
僕の手を取った
支えるように立ち上がらせ
茶屋に連れ帰った。
自分の部屋で手当をして
寝かせた
しだいに穏やかに寝る彼を見て
何とかしてあげなきゃ
と思った
自分よりも大きい
冷たい目をした彼を見て
心からそう思った
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。