第2話

壱 幸之助vijon
162
2020/02/03 14:03
幸之助ー

痛くないのに……体が重い……

血が流れ出てる

思わず道端に座りこんだ
道行く人が俺を見る

見るな、ひとなんて……
大嫌いだ
どうせ助けもしないクセに

雨が振ってきた
何も感じない

このまま……死んでも

いいかな……?
楽になれるな?



気がつくと雨が止んでいた
違う、止んでない。
雨音はする

少し顔を上げると
赤い着物の裾が見えた

もう少し顔を上げる

……女……?
いや、男だ。

いつもだったら逃げ出してるのに
睨むのに

何故か……
こいつを睨みたくなかったし
逃げようとも思わなかった

俺に傘をさしている
長い銀髪と綺麗な着物が濡れているのにも関わらず

優しく微笑んで

気が付けば差し出された手を取っていた

そこからは……よく覚えてない

ただ、華やかな明かりに包まれて
薄暗い…いい香りのする部屋に行って……

手当てをされたのか?
……暖かい……

俺の意識はそこで途絶えた

こんなに……
安らかな気持ちは
……

初めてだった

プリ小説オーディオドラマ