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第1話

まどろみの誘惑
27
2020/12/07 10:32
ふわふわとしたまどろみの中で、一人の少女が歩いていた。 

「…大丈夫、大丈夫」

夢の中でさえこの言葉が口をついて出る自分に半ば呆れながら、ゆっくりと白に塗りたくられた場所で歩を進める。



ーもう、大丈夫だよ。



いつの日か誰かにかけられた言葉が、ふいに脳内で再生される。

何度も思い出したその言葉は、自分の言葉とは違って心の中が暖かくなる。
これ以上ない幸せで胸がいっぱいになった少女は、まどろみの中から抜け出す為に自分の頬を軽く叩いた。

ここから出れば、また忙しい現実が待っているだろう。

そう考えて、手の動きを一度止める。

(…でも)

━━そのかわり、まどろみの暖かさが私を癒してくれる。

「…もう、大丈夫ね」

そう呟いた言葉が空白に吸い込まれていくのと同時に、私の意識は現実に戻った。

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