黒麗side
連れて来れたのは相変わらずひとけの無い浜辺。
「ここには想い出がいっぱいあるな〜」なんて
思いながら歩いていると、急に蓮くんが立ち止まって
静かに、でも勢いよく言葉を出した。
.
すると蓮くんは砂浜に膝を付きながら何処からか
高級感のある小さな箱を取り出し、蓋を開けた。
その箱の中にはキラキラと輝く指輪が入っていた。
.
蓮くんが言った言葉の意味。
それは、
“あなたと結ばれたい”
私が戸惑っていると決意の宿った目をしながら
話し始めた。
蓮くんは全然未熟じゃないし、頼り甲斐がある。
どんな時も頼らせてくれて守ってくれて、。
蓮くんは出逢った時から私だけの王子様だよ。
.
涙が次から次へと溢れて止まらない。
今までずっとファンの人たちの事を1番に考えて、
“できないままでも、蓮くんと一緒にいられれればいいや”と思ってた。
いや、思い込んでた。
どんなに思い込んでいても頭の片隅では、
例えこれまでと何も変わらないとしても
“結ばれたい”と想っている自分がいる。
そんな夢が、想いが叶った瞬間だった。
.
.
.
.
なんていつもは恥ずかしくて言えない事が
スラスラ出てきて、止まらなくて、話しながら
一度止まった涙がまた溢れてきた。
結局はこれなんだ。
ただ、これだけ。
どんな地位よりも、功績よりも、賞よりも、
私は蓮くんの隣にいたい。
目の前の蓮くんはまとまりのない私の出まかせの話を
その綺麗な目から静かに涙を流しながら聞いている。
.
.
.
.
そう言うと蓮くんは今までお仕事でつけさせて貰った
どんなジュエリーよりもきらきらと輝く指輪を私の
薬指にそっとはめた。
.
そう言うと、どちらからともなくキスを交わし
抱きしめあった。
そして、誰もいない砂浜で、わたしたち以外の誰も
見ることのない写真を撮った。
@rei.ku
I'm a happy person to meet you.
.
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。