普通なら、こんな状況で告白するんだろうけど、
私はそんなに素直じゃないから
可愛くない返事しかできない。
こんなムードの中でも。
私を握る奏耶の手が強くなる。
「だった」.....
浴衣って、意外に暑くないのに。
今すごい暑い。
顔が赤いのがわかる。
素直じゃないだけの私は嫌だ。
今年は、いつもと違う夏にするんだもん。
言えた。素直になれた。
でも遅かった。もう奏耶は....
奏耶が私の手を引っ張った。
口が。当たってる。
奏耶の口に。
そしてまた唇が重なる。
いつもと違う、夏が始まる。
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夏の夜は嫌いだ。
暑さのせいで、こういう別れまでもが
いつも以上に惜しくなるから。
奏耶が振り返った。
ここまで歩いてくるのも、うちらは緊張で
何も話さなくて。
手はちゃんと繋いでたけどね
なんか、いつもの奏耶だ。
私たちはこのテンションが1番心地いい。
奏耶が私を呼ぶ。
やっぱり奏耶は小悪魔なところがあるらしい。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!