奏耶の力。強かった。
もう男の人だ。立派な。
中学の頃とは違う。もう奏耶は子供じゃない。
でもなんだろ。意識しちゃって。
怖くて。
いや、怖いのは
奏耶が大人になったからだけじゃない。
私が奏耶に対して抱いてる
この気持ちを認めてしまうのも怖いんだ。
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「山の時運んでくれてありがとう」
って、直接言いたかったのに。
なんか今奏耶と会うのが少し嫌で。
私は紙に書いて、奏耶の下駄箱に入れた。
会うの嫌だからって、
話しかけられても避けるのは違うくない?!私...
瞬と朝日はここにいるのに。
奏耶だけいなくて。
私が避けたからだ....
でも....
奏耶がいきなり私に近づいて、変なこと
言ってくるから悪いんだよ...
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そして1日何も話さず放課後。
私はHRが終わってから、ずっと顔を机に伏せていた。
奏耶に悪いことしたのはわかってる。
奏耶の声がする。
私が今朝下駄箱に入れた紙を笑いながら見せてきた。
しょうがないじゃん。
なんだか書くとき手が震えて。
図星。
どういうこと?
そんなこと聞いた記憶がない。
失言.....
なに悪口言ってくれちゃってんのよ!!
恥ずかしすぎる....
真剣な面持ちに変わった奏耶がそう言った。
少し表情が柔らかくなった奏耶が言った。
その顔は、笑顔でも泣き顔でもない。
なんとも言えない顔。
奏耶はなにもわかってない。
嫌いになるわけないじゃん。
避けたいわけないじゃん。
......逆だよ、ばーか。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。