え、なんで?
離れようって思えば離れられるのに
そう言ってその子は早足に私たちの元を離れた。
友達.....
ジリジリと奏耶が近づいてくる。
辺りは静かで。
私の鼓動と、私に近づく奏耶の足音だけが聞こえる。
奏耶は私の肩を掴んで。また少し近づく。
残り30cmくらい。
奏耶が私から距離をとる。
冗談じゃないんだもん。
冗談っぽく言えないよ。
緊張が解けて、みんなの声が聞こえて、風の
音が聞こえて。
賑やかなのに
私の鼓動は、騒々しいくらい音を増すばかりだ。
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夏が来た。
夏といえば。
私は真っ先にお祭りが浮かぶ。
私たちの町では、少し早めに夏祭りがある。
確か....
毎年お祭りは、瞬と奏耶と朝日と一緒。
同じ浴衣を着て。
ただ男子って、「いぇい夏祭り行こうぜぇぇええ!」
って自分たちからなるものではないのか。
私から誘わないと話の話題にも上がらない。
....毎年同じは嫌。
今年は今までとは違う夏にしたい。
今年は。
一味違う夏に。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。