第9話

また明日。2
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2018/02/09 13:10
帰り道の途中、俺たちの目の前を、大学生らしき人たちが歩いていた。

あなたの方を見ると、悲しいとも、羨ましいとも言えない表情をしていた。いや、表情などなかったのかもしれない。まさに、無表情というやつなのかもしれなかった。
祐介
なぁ、あなたは、人はなんのために生まれてきたんだと思う?
あなた

え、うーん、愛を知るため、とか?

祐介
愛かぁ…。
愛という言葉が、俺は、好きではなかった。
俺は、ずっと、誰からも疎まれてきた存在だったから。
あなた

ほら、家族からの愛とか、友達からの愛とか。

あなたは、クラスでも割と目立つほうなので、色んな人から好かれていた。俺とは、全くもって対照的なやつだった。
祐介
ふーん。
あなた

祐介君は、人はどうして、生まれてきたんだと思う?

祐介
俺は、人は、死ぬために生まれてきたんだと思う。
嘘じゃなかった。
それに、その言葉が、あなたを慰められる気がした。
あなた

死ぬため…
確かにそうかもね。

あなたの声は少し震えていた。
でも、俺は躊躇することなく言った。
祐介
いつか、人は死ぬんだ。
だから、死ぬのは別に不思議な事じゃねぇだろ。
俺もあなたも黙っている間に、いつの間にか、あなたの家に着いていた。
あなた

あ、もう家かー。
バイバイ、祐介君。

祐介
じゃあな。また…
そう言いかけた瞬間、あなたが俺の言葉を遮った。
あなた

また、明日なんて、言わないで。

あなた

じゃあね。

あなたは、泣いていた。
俺は、自分が言おうとしたことの意味の重さを知った。死ぬことじゃない。訪れるかどうかわからない明日が怖いんだ。

自分の言いたいことを言いながら、それを慰めと誤魔化す、自分勝手な俺が、嫌だった。

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