帰り道の途中、俺たちの目の前を、大学生らしき人たちが歩いていた。
あなたの方を見ると、悲しいとも、羨ましいとも言えない表情をしていた。いや、表情などなかったのかもしれない。まさに、無表情というやつなのかもしれなかった。
愛という言葉が、俺は、好きではなかった。
俺は、ずっと、誰からも疎まれてきた存在だったから。
あなたは、クラスでも割と目立つほうなので、色んな人から好かれていた。俺とは、全くもって対照的なやつだった。
嘘じゃなかった。
それに、その言葉が、あなたを慰められる気がした。
あなたの声は少し震えていた。
でも、俺は躊躇することなく言った。
俺もあなたも黙っている間に、いつの間にか、あなたの家に着いていた。
そう言いかけた瞬間、あなたが俺の言葉を遮った。
あなたは、泣いていた。
俺は、自分が言おうとしたことの意味の重さを知った。死ぬことじゃない。訪れるかどうかわからない明日が怖いんだ。
自分の言いたいことを言いながら、それを慰めと誤魔化す、自分勝手な俺が、嫌だった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。