あれから2日経つ。
何を意地張っているんだとも自分で思うが、認めたくないという気持ちが強すぎる。
もしも妊娠していたら、もしも今ここにいるのが俺だけではなく、子供も一緒なのだとしたら。
デイヴィスは俺に愛想尽きて何処かへ行くかもしれない。
だが、半分認めつつある。
検査結果は陽性だった。
あとは俺が認めるかだ。
事務所には顔を出している。
と言っても持ち帰りの仕事にしたので業務はここでやっている。
和の国に屋敷を置いておいてよかったと思っている。
そう言って俺は電話を切った。
子供を降ろすつもりはない。
デイヴィスに愛想を尽かれたとしても、俺と子供で生きていく。
現実的ではない。
そんなことはわかっているが、自分の心の中の恐怖には逆らえない。
誰もいない空間に、ふとこの場にいて欲しい人の名前を呟いた。
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クルーウェルside
誰もいない家に消える声。
今日が終われば3日目を迎える。
ユウの言う通り妊娠しているのだとしたら一大事だ。
だが、妊娠しているからといって俺の前から消える理由がわからない。
いつもあなたが使っていたパソコンが目に入る。
理由もなくパソコンを開いて検索ボックスをクリックする。
そして見えた検索履歴。
あなたの分のコートも持って、俺は家を飛び出した。
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家に食材はあるものの流石に在庫も切れてきた。
そろそろここを出て買い物にでも行かなければ…
そんなことを考えているとまた猛烈な眠気に襲われて、俺はその場で目を閉じてうずくまった。
ガチャ
起き上がろうにも起き上がれない。
体が重い。
合鍵を持っているのは数少ない人間だが、万が一の可能性がある。
この状態では対処ができない。
俺が弱っている状態に攻めてきたこと、戦略としてはパーフェクトだ。
気分が落ちているので応戦する気にもならない。
会いたくなかった。会いたかった。
今伝えたら、離れていくのだろうか。
抱き上げられてベッドまで運ばれる。
伝えなければいけない。
例え、離れるとしても。
デイヴィスはその瞬間を切り取ったかのように固まった。
やはり、
杞憂だったようだ。
デイヴィスは俺が考えているよりもずっと、温かい。
いつも悪役になりきれない。
デイヴィスの首に腕を回す。
とても長かったように感じる。
たった3日会っていなかっただけなのに、ずっと会っていなかったように感じる。
デイヴィスに抱きしめられたことが、とても幸せに感じた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。