あの多数殺人事件が起きてから15年
ようやく綾華は釈放された
そんなことを呟いていると、刑務所の方から綾華の名を呼ぶ声が聞こえる
「綾華さん、あなた宛に手紙が送られてきていましたよ」
誰かは分からないが手紙を届けてきてくれた
「では、私はこれで失礼します」
綾華が呼びかけるもその人は振り返らず真っ直ぐに刑務所へと戻っていった
恐る恐る手紙を開いてみると…
そう、手紙の寄こし人はしんぺい神だった
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柚葉 綾華へ
今日は刑務所から出る日だね。
本当なら君を迎えに行きたかったけど、急な用事が入って行けれなくなってしまった。
久しぶりに君の顔が見たいよ。
楽しそうにしている笑顔や、悲しそうにしている泣き顔。全てがもう一度みたい。
今、俺はある会社の社長をやっている。
最近ではとても有名になっている、HAPPYって言うんだ!知ってるかな…?
俺はさ…今でも覚えてるよ。
君は覚えているか分からないけど…
言ってくれたよね
「懲役で済んだら、私と一緒に暮らしてくれる?」
って。俺は今でも鮮明に覚えてる。
君のその時の泣き顔、笑顔、脳裏に焼き付いてる。
俺はあの時、「うん」って言ったよね。
君がもし、あの時の言葉を覚えているのなら…
俺と一緒に暮らそう?
夢緑公園で待ってます
しんぺい神より
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綾華は手紙をポケットに入れて泣き腫らした目をキッとしながら言った
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。