第8話

#8
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2019/04/24 14:35
BARを出た頃には、ザアザアと雨が降っていた。

…ここから歩きで帰るのか………。

そう思うと、気が遠くなる。
誰か、助けてくれないかなぁ…。
貴久
ん、乗る?
あなた
え、の、のるって?
貴久
俺の車。助手席乗る?
あなた
い、いいの……!?
貴久あぁ…!!!!
ここに通ってて良かったと、初めて思った。
貴久
ほら乗って。
あなた
ありがとう…!
貴久
いいから早く乗れ!
東京の明るい景色が、雨でさらに輝いて見える。
このまま私を家に帰してくれるのかと思えば、全く反対方向へ車が進む。
え、なに企んでるの?
あなた
ね、ねえ貴久……。
貴久
なに?
着いたのは、貴久の家。
恐る恐るソファーに腰掛けて…。
………腰掛けて、何したらいいの??
貴久
よいしょっ。
あなた
うわあっ!
貴久
なに?
あなた
いきなり座んないでよ!
貴久
ここ俺んちだし。
あなた
………そうだけど!そうだけどね!
びっくりするじゃん!
貴久
……そこは警戒すんのかよ。
…た、貴久……?
私の腰に腕を回して、向き合った。
少し暗い部屋に、雨の音が響く。
貴久
なぁ、俺のこと、どう思ってんの?
あなた
な、なにが…っ。
貴久
……あいつと、どこまでやった?
あなた
ど、どこまで…なんて、知らないよ!
貴久
知らないのに、のうのうと男の家に上がっちゃうんだぁ…へぇ。
なんでこんなに、溜めるの。
貴久が私に気があるなんて思えない。

…かといって、嫌いなわけでもないとは思う。
じっと見つめるから、恥ずかしくて目を逸らした。
貴久
目、逸らすんじゃねぇよ。
顎を掴まれて、強引に目を合わせられる。
その瞬間、貴久の唇と私の唇が重なった。

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