BARを出た頃には、ザアザアと雨が降っていた。
…ここから歩きで帰るのか………。
そう思うと、気が遠くなる。
誰か、助けてくれないかなぁ…。
貴久あぁ…!!!!
ここに通ってて良かったと、初めて思った。
東京の明るい景色が、雨でさらに輝いて見える。
このまま私を家に帰してくれるのかと思えば、全く反対方向へ車が進む。
え、なに企んでるの?
着いたのは、貴久の家。
恐る恐るソファーに腰掛けて…。
………腰掛けて、何したらいいの??
…た、貴久……?
私の腰に腕を回して、向き合った。
少し暗い部屋に、雨の音が響く。
なんでこんなに、溜めるの。
貴久が私に気があるなんて思えない。
…かといって、嫌いなわけでもないとは思う。
じっと見つめるから、恥ずかしくて目を逸らした。
顎を掴まれて、強引に目を合わせられる。
その瞬間、貴久の唇と私の唇が重なった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。