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第22話

番外編 #1
492
2019/09/04 09:51
──俺らしくない…
カウンター席に置いてある、飲みかけのカップを見てそう思った。
こんな簡単に女を手放せるなんて…。
貴久
…あなた。
俺の声は、誰もいないBARに谺響こだまするだけだった。
証明に照らされてオレンジ色に光るブラッド&サンドは、いつもそこに座っていた彼女と重なった。

笑った顔は太陽みたいに、
悲しい顔は曇り空のように、
色々な顔を見せる彼女は、俺にとって本当に大切な人で大好きな人になっていた。
貴久
いい人ぶってんじゃねぇよ、俺。
好きな人の幸せなんて、心から願うやつはいないって気づいた。それくらい、人間の心は汚くて醜い。
それでも俺は、彼女のために、ここを落ち着く場所にしてやらなくてはならない。
汚い奴でごめん、あなた。祐也。

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