俺は、正直に言ってあなたが好きだ。
俺に甘えてきて、無防備で、だけど仕事になると急に真面目になる。そんなあなたの癒しの場所を作ってやりたい、と思ってる。
だけど、今のあいつの癒しは祐也なわけで。
カクテル言葉は知っている。自分の店に置いてあるカクテルの言葉くらいなら。
だから俺はあなたにアプリコットフィズをプレゼントした。
…それなのに、知らないとか……。
アプリコットフィズのカクテル言葉は…
【振り向いてください】。
アプリコットフィズのカクテル言葉くらい覚えとけよ…なんて、言えるわけもなく。
本当は俺の気持ちに気づいて欲しかったけど、俺の口からこの言葉を言うのはめちゃめちゃ恥ずかしい。
そこに、祐也が到着…。
なんだよその目、喧嘩売ってんのか?
あなたが祐也くんにもプレゼントしてあげてなんて言うから、ちょっとこいつをやる気にさせてやろう。
あなたはバカだから気づいてないけど、祐也は人間じゃない。
…きっとヴァンパイアだ。
そんなヴァンパイア様に良いカクテルをプレゼント。トマトジュースが入ったカクテル。
ブラッディメアリー。
カクテル言葉は【断固として勝つ】。
本当に頭の回転が早いヴァンパイアだ。
もう俺の気持ちに気づけるなんて。
まあ、それを狙ったのは俺だけどな。俺もゆっくりしてられなくなってきたなぁ。
そろそろ本気で堕としにいくか。
待ってろよ、俺のコザック─────
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!