第48話

親友No.1
1,820
2019/02/23 01:49
あなたの泣き声だけが部屋に響く
あなた
あなた
うっ……ぐすっ……。
マサイ
マサイ
あなた…
俺の目の前で泣くあなたになんて声をかけてあげればいいのかわからない。

あなたと凱斗の問題でもある。

俺が首を突っ込んでもいいことなのか。
あなた
あなた
まさ……っいっ…ひっく…ごめっ…ん…ぐすっ…
こちらを振り向いて
涙を袖で拭いながらそう言った。

でも、あなたが謝ることは無い。
俺があの時、一緒についていってればこんなことにはならなかったのに…
俺は首を横に振ってあなたを抱きしめた
マサイ
マサイ
あなたが謝ることじゃない。
あなたは、悪くないんだからさ。
あなたは俺の腕の中で首を横に振った
あなた
あなた
私が……っ、悪いの…ひっく…
マサイ
マサイ
あなたがキスられてたのはムカつくけど…
俺はあなたを責めるつもりはない。
無理やりされたんだから。
あんなの不可抗力だろ?
あなた
あなた
でっ…も…
今、あなたの唇に凱斗の感触が残っていると思うと
最悪だとは思う。
だけどあれは避けられるものではなかった。
言ってしまえば………
「仕方の無いキス」だったんだ。
俺はそんな風に思いたくはない。
あなたが俺以外の男とキスをしたことは事実
あなた
あなた
ごめんねっ…マサイ……ひっく…
俺はあなたの背中を優しく撫でた


しばらくしてあなたは泣き止み、落ち着いてきた
マサイ
マサイ
落ち着いたか?
あなたはコクリと頷いた

まだ目が少し腫れている
あなた
あなた
私…どうしよう…。
あなた
あなた
キスしたことも、凱斗に酷いこといっちゃったことも…
あれは凱斗が怒りに任せて放った言葉だろう。
今まで隠して隠して隠し通してきた恋心が一気に溢れ出したんだ。
無理もない。

凱斗も泣いていた…

凱斗のあなたへの想いはそれほどのものだったんだと改めて思った。
でも、キスをしたことを許した訳でもない。

俺は無言であなたにキスをする
頬に手を添えて優しいキスを繰り返す

あなたの頬には涙の跡が残っていた

俺以外の男とキスをしてしまったことへの罪悪感…
凱斗を傷つけてしまったことへの責任…

たくさんの思いが詰まった涙だったのだ。
唇を離してあなたを見る
あなた
あなた
マサイじゃなきゃ…嫌…。
そう言って俺に抱きつくあなた。
マサイ
マサイ
凱斗とちゃんと仲直りしろよ?
あなたの辛い顔は見てたくないからな。
あなた
あなた
うん…でも、いつ言おう…
マサイ
マサイ
もっかい呼べば?ここに。
もう一度ここに呼んで話した方が早い。

俺だって話したいことはまだまだあるんだ。
あなた
あなた
でも、来てくれるかな?
心配そうに上目遣いで聞いてくる。
その目に弱い俺は目を逸らしながら言う
マサイ
マサイ
き、来てくれるだろ。
ちょっとテンパったけどあなたにはバレてない
あなた
あなた
じゃ、電話するね。
マサイ
マサイ
おう
あなたは別室に行き、しばらくして戻ってきた
あなた
あなた
来るって…
マサイ
マサイ
そうか。良かったな。俺、違う部屋にいるから…ちゃんと話せよ?
あなた
あなた
え?マサイ…一緒にいてくれないの?
今にも泣きそうな顔で聞いてくる。
俺だって出来るならいたいけど…
これは、俺が首を突っ込んでは行けないことだと思うし。
マサイ
マサイ
これは、あなたと凱斗の問題。
俺が首を突っ込むわけにはいかない。
ごめんな?でも、ちゃんと見守ってっから。
心配すんな。
あなた
あなた
そうだよね…ありがとう!
パァっと一気に明るくなるあなたの顔。

その後、チャイムが鳴り凱斗が再び俺の家にやってきた
マサイ
マサイ
次、何かしたら…ただじゃおかないから。
あなたには聞こえないくらいの小さな声で凱斗の耳元でそう呟いた
新島 凱斗(にいじま かいと)
新島 凱斗(にいじま かいと)
さぁな…。
そんな曖昧な返事に不安を抱きながらも、扉の外で話を聞く
新島 凱斗(にいじま かいと)
新島 凱斗(にいじま かいと)
話って、なに?
あなた
あなた
帰ってとか言って、ごめんね…。
悪気はなくて…
マサイのことを色々言われて、つい怒ってしまいその勢いで言ってしまった言葉に後悔がつの
新島 凱斗(にいじま かいと)
新島 凱斗(にいじま かいと)
別に。なんとも思ってない。
目を合わせてくれない凱斗の横顔はどこがさびしそうだった
新島 凱斗(にいじま かいと)
新島 凱斗(にいじま かいと)
キスしたこと…おこってねぇの?
怒ってない訳では無いけど、なぜか凱斗を責めようとは思わなかったし怒ろうとも思わなかった。
あなた
あなた
怒ってないわけじゃないけど
凱斗を責めるつもりはないよ。
凱斗は一瞬だけこちらを見て目を見開いたが
すぐに顔を背けてしまった
新島 凱斗(にいじま かいと)
新島 凱斗(にいじま かいと)
急にキスして…ごめん。
申し訳なさそうに謝る凱斗
あなた
あなた
ううん。私も、ごめんね。
私がそう言った瞬間、凱斗と目が合った
新島 凱斗(にいじま かいと)
新島 凱斗(にいじま かいと)
俺やっぱりあなたのこと、好きだ。
いつもより真剣な顔いつもより低い声

全部が全部、凱斗が凱斗じゃないみたい。
あなた
あなた
ごめん…凱斗。
私はマサイしか好きになれない…。
凱斗は唇をグッと噛み締め、俯いた
新島 凱斗(にいじま かいと)
新島 凱斗(にいじま かいと)
お前に彼氏が出来たとしても、普通に応援出来るくらいのうつわはもってる。
下を向きながらそう呟いた
新島 凱斗(にいじま かいと)
新島 凱斗(にいじま かいと)
でも…なんでマサイさんなのかわからない。
お前が危険な目にあってでもマサイさんを好きでいる理由が、俺にはわかんねぇんだよ。
そっか…

凱斗は何も納得出来てない状態だったんだ。

でも、ちょっと待って?
何かがおかしいよ。
あなた
あなた
私が…危険な目にあったこと、どうして知ってるの?
新島 凱斗(にいじま かいと)
新島 凱斗(にいじま かいと)
そ、それは……
凱斗は口を噤んでしまった
新島 凱斗(にいじま かいと)
新島 凱斗(にいじま かいと)
お前の、兄ちゃんから聞いた…
あなた
あなた
龍が!?
嘘…知り合いだったの?
新島 凱斗(にいじま かいと)
新島 凱斗(にいじま かいと)
俺、お前の兄ちゃんに助けられたことがあるんだ。それで知り合って…
んで、こないだその事を聞いたんだ…
あなた
あなた
そうだったんだ…
それは、知らなかったなー…。
あなた
あなた
でもあれは、マサイのせいじゃない。
新島 凱斗(にいじま かいと)
新島 凱斗(にいじま かいと)
は?
少しだけ顔を歪ませた凱斗の口からは『なんだそれ。どーゆー意味だよ。』と言いたげだった。
あなた
あなた
あれはマサイが原因じゃないの…
私が、狙われてたの。
新島 凱斗(にいじま かいと)
新島 凱斗(にいじま かいと)
でも現に危ない目にあってるだろ?
それでもお前はマサイさんが好きって…なんなんだよ。
危ない目にはあった…でも私がマサイを思う気持ちとそれは、話が別だ。
あなた
あなた
それは、関係ないよね?
新島 凱斗(にいじま かいと)
新島 凱斗(にいじま かいと)
え?
あなた
あなた
私が危ない目にあったとしても、マサイへの想いが変わるほど気持ちがうわついてる訳でもないし、ずっと一緒にいたいって初めて思えた人とだったら危ない目にあったとしても、好きな気持ちに変わりはないわけだから。
うん…。
私は何があってもマサイを好きでいられる自信がある。
新島 凱斗(にいじま かいと)
新島 凱斗(にいじま かいと)
そう、だよな…。
あなた
あなた
え?
新島 凱斗(にいじま かいと)
新島 凱斗(にいじま かいと)
俺もだ。
あなたのことずっと見てきたとか関係無しに
俺は親友としても好きな人としてもあなたとずっと一緒にいたいって思ってる。
あなた
あなた
凱斗…
私は凱斗のこの想いに応えることが出来ないけど、それでも私と一緒にいたいと思ってくれて嬉しかった。

内心、もしもこのまま凱斗と話せなくなってしまったら…とか考えてたけど
やっぱり長年一緒にいるからこその思いがあった
新島 凱斗(にいじま かいと)
新島 凱斗(にいじま かいと)
諦めきれるかどうかはまだわかんねぇけど…
俺は、あなたとはずっと一緒にいたい。
親友として。
あなた
あなた
私も。
もしもこのままずっと話さなくなったらどうしようって怖かったけど、凱斗の言葉聞いて安心した。
新島 凱斗(にいじま かいと)
新島 凱斗(にいじま かいと)
おう。
凱斗はニコリと笑う
新島 凱斗(にいじま かいと)
新島 凱斗(にいじま かいと)
俺、ほかの女にも目を向けるよ。
今まであなたしか見てなかくて興味なかったから。
あなた
あなた
うん!
私は嬉しかった。

罪悪感と後悔でいっぱいいっぱいだったけど

凱斗が他の人と幸せになってくれたら

どれほど嬉しいか。

-『好きにならなきゃよかった』-

言われた時は、ショックだった。

1度失いかけた親友という関係…

でも再び、親友に…いや

それよりもっと上の存在になった
凱斗と私。

今まで以上に仲良くする必要はなくて
いつも通りに毎日を過ごす。
それが私たちが望む日常。

そう思った。
新島 凱斗(にいじま かいと)
新島 凱斗(にいじま かいと)
マサイさんのこと色々言って悪かった。
マサイさんに嫉妬しただけだった。
ごめんな。
あなた
あなた
ううん。全然!
申し訳なさそうに謝る凱斗の手を握る
あなた
あなた
これからも、ずっとずっとよろしくね!
私は、凱斗の親友No.1になってみせるから!
凱斗の手をブンブンと振り回しそう言った

凱斗は呆れ笑いをしていた

でもそんな時間が楽しかった。

さっきまでの気まずい空気が嘘のようだ。
ガチャリとドアが開く
マサイ
マサイ
仲直り、できて良かったな。
あなた
あなた
うん!!
あなたはさっきの泣きそうな表情とは真逆でとても笑顔でどこかスッキリした表情をしていた
マサイ
マサイ
凱斗、お前も頑張れ。
俺は凱斗に拳を向ける
新島 凱斗(にいじま かいと)
新島 凱斗(にいじま かいと)
あなたのこと大事にしなかったぶっ飛ばすからな
笑いながら言ってコツンと拳を合わせる
あなたは横でふふっと笑って見守っている
その後、色んな話をして凱斗俺らの家をあとにした
あなた
あなた
マサイ、ありがとね!
マサイのおかげで凱斗とちゃんと向き合うことが出来た…。
マサイ
マサイ
俺はなんもしてねぇよ
ふっと俺は笑う

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