[ラウール]
僕は、小さい頃から“1人”だった。
両親や兄弟から毎日、ずっと虐待されていたから。誰も頼れなかった。そもそも、頼れる人がいなかった。
虐待を受け続けているうちに、いつの間にか僕はそれまで持っていた“全て”を手放していた。
全身痣だらけだった僕は、ある日隙を見て家から逃げた。痣が出来てても、“感覚”や“感情”をも手放していた僕は何も感じなかった。
力尽きて道端に座り込んでいた所を“あの人”に助けられた。
放浪としていただけで、どこに行くとか決めていなかったからその人について行った。
そこは....ある孤児院だった。
分からなかった。でも、あそこには戻りたくなかった。
それから、僕は孤児院で過ごした。その中で、初めて経験した事がたくさんあった。
僕は、知らないうちに“手放していたもの”を再び手にし始めていた。
そして、皆の本当の“姿”も.....
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。