第2話

髙橋 祐理ルート《リアル型脱出ゲーム》
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2019/06/12 21:09

リーダーの祐理さんとは、期間限定イベント・『リアル型脱出ゲーム』に参加する。


会場に移動する間、彼を見つけたファンの女の子たちから、黄色い声が上がった。


私が素人モデルだということは、誰も知らないようなのだけれど、それでも体中に突き刺さる視線が痛い。
髙橋 祐理
髙橋 祐理
突然こんなこと頼まれて、緊張するでしょ?
あなた

はい……。
これは夢なのではないかと……

髙橋 祐理
髙橋 祐理
そうだよね。
でも、俺に任せておけば大丈夫。
さっき聞いたと思うけど、撮るのは雑誌の特集に載るショットだけだから。
台詞とかも気にしなくていいし、自然体でね
あなた

はい、ありがとうございます


年長者でリーダーということもあってか、落ち着いた雰囲気の彼は、そう優しく声をかけてくれた。


おかげで、体から力が抜け、強張こわばった表情も少し和らぐ。
あなた

(深呼吸……)


謎解きに自信があるわけではないけれど、彼と一緒ならうまく乗り切れる。


そんな気持ちにさせてくれた。



***



事前に参加が申し込まれていたらしく、会場に到着したら、すぐに案内された。


私たちは他の一般客に混ざり、五~六人のグループに分かれていく。


そして、カメラマンも含めて六人で密室に閉じ込められた。


この部屋の中で謎を解き、鍵を見つけて脱出すればクリアとなる。
あなた

本当に閉じ込められるんですね

髙橋 祐理
髙橋 祐理
うん。
俺、こういうゲームが好きだからさ、一度挑戦してみたかったんだ

扉が開かないことを確認していると、祐理さんがそう言った。


わくわくした横顔を見る限り、本当に楽しみにしていたらしい。
一般客
最初の謎解きってこれですかね?
一般客
動物と数字? なんだろう……

他の客がそう言って、テーブルに集まっている。


私たちもそこを覗き込むと、動物のイラストに、それぞれ数字が割り当てられたカードが置かれていた。


カードの下部には『Key.□□□□』と書かれている。
あなた

何かの暗号でしょうか?

髙橋 祐理
髙橋 祐理
多分、答えがどこかのパスコードになってるんだ

祐理さんは部屋の中をぐるりと見渡し、あちこち扉や引き出しを開けている。


私もできるだけ手伝おうと、カードとにらめっこをした。


動物と数字は、それぞれ『ゾウ 2』『ウサギ 5』『イヌ 2』『ニワトリ 7』となっている。
一般客
いろいろ計算してみればいいのかな
一般客
ゾウが二頭、ウサギが五羽……ええ?
あなた

答えは四文字ってことは、ひらがなか、数字か、アルファベットか……それも考えなきゃいけませんよね?


みんなが頭を悩ませる中、私がそう発言すると、祐理さんが「あった!」と叫んだ。


そのまま、手に直方体の箱らしきものを持って、テーブルへとやってくる。
髙橋 祐理
髙橋 祐理
これに答えを入力するんだ。
アルファベットみたい
あなた

あっ、すごい


見せてもらった箱にはデジタルロックがかかっていて、四つのボタンと液晶画面がついている。


試しに数回ボタンを押してみると、アルファベットが順に表示された。
あなた

答えがアルファベットってことは、とりあえず動物を英語に変換してみますか?

髙橋 祐理
髙橋 祐理
あ、それだ!

私が何気なく提案したことに祐理さんは手を叩き、さっそく白紙に英単語を書き始めた。
髙橋 祐理
髙橋 祐理
elephantが2、rabbitが5、dogが2、chickenが7……
一般客
数字は、文字の何番目か、じゃないでしょうか?

祐理さんが書き出した文字を見て、男性のひとりがそうひらめく。
髙橋 祐理
髙橋 祐理
! と、いうことは……順にl・i・o・n
あなた

『ライオン』ですね!


私が箱に“lion”を入力してみると、ピピッという電子音がして、解錠された。


正解だったようだ。
あなた

やったー!

一般客
やりましたね
髙橋 祐理
髙橋 祐理
よし、この調子でいこう

その後も、祐理さんは他の客を引っ張っていく形で推理を続け、私もそれを精一杯手伝った。


いよいよ終盤かという頃。
あなた

えっと、『う・え・を・み・ろ』……上? あっ!


謎解きの答えが指示だったので、全員で天井を見上げた。


すると、天井の隅にメッセージカードが貼られているのが目に入る。


テーブルと椅子を組み合わせて、ようやく手が届くかもしれない高さだ。
髙橋 祐理
髙橋 祐理
待ってて

祐理さんがそう言って動き出したかと思いきや――。


彼は壁を両足で交互に蹴って、軽々と上にのぼり、メッセージカードを掴むと着地した。


あまりにも鮮やかなその技に、見ていた全員が思わず息を呑む。


そういえば、彼はアクロバットな動きが得意だったのだ。
一般客
おおー!!
あなた

すごいです! なんですか、今の!

髙橋 祐理
髙橋 祐理
あ、ありがとう……

みんなで拍手しながら賞賛すると、祐理さんは照れくさそうに笑った。



***



数分後。


私たちは見事脱出し、初対面同士、ハイタッチをして喜び合った。
髙橋 祐理
髙橋 祐理
お疲れさま
あなた

お疲れさまでした!


解散後、祐理さんが話しかけてくる。


今、あのゼロプラのリーダーと話ができているというのに、私は達成感の方で胸がいっぱいだった。
髙橋 祐理
髙橋 祐理
楽しかった?
あなた

はい。
脱出ゲームなんて初めてだったので、全部新鮮でした

髙橋 祐理
髙橋 祐理
よかった。
じゃあ、記念写真撮っていい?
あなた

記念……?


彼の手に握られているのは、私物と思われるスマートフォン。


雑誌の撮影とは別に、プライベートの写真を撮りたいということだ。


一気に現実に引き戻されて、私はおそれ多くも頷いた。
髙橋 祐理
髙橋 祐理
はい、笑って、笑って
あなた

……は、はい


イケメンと顔を寄せてのツーショットなんて、もう二度と体験できないかもしれない。


シャッター音が聞こえると、私のぎこちない笑みが撮れたようだ。
髙橋 祐理
髙橋 祐理
今日はありがとう。
俺もとても撮影しやすかった。
モデルが君でよかったよ
あなた

……はい!


祐理さんが笑い、私の頭を撫でる。


労いと優しさを感じる、温かい手のひらに、嬉しさで胸の奥がきゅっとなった。


【髙橋 祐理ルート:完】

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