第15話

新たな始まりの予感
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2022/07/23 01:10
「瑠香、ごめん!」

朝、教室に一番乗りでやってきたわたしは教室に入ってきた瑠香に声をかけ、廊下まで引っ張ってきた。

「別にそんなに謝らなくていいって。あたしも昨日は感情的になって言いすぎたし。ごめんね」

「ううん、瑠香のおかげでちゃんと自分の気持ちを直に伝えることができたの」

「そうなの?」

「うん。昨日、わたしが好きなのは雨宮くんだから直とは付き合えないってハッキリ伝えたの。直も分かってくれたよ」

「へぇ。お人よしの華凛がまさか直を突き放せるなんてね。意外だわ」

「お人よしなのは瑠香でしょ?直のことがずっと好きだったのに、わたしにも直にも言わずにずっと黙ってたんだから」

「別にそんなんじゃないけどさ」

そう言うと瑠香は照れ臭そうにわたしから顔をそむけた。

「ねぇ、瑠香。今度はわたしに瑠香の恋を応援させてもらいたいな」

「え?」

「直と瑠香っていいコンビだと思うの。だから――」

「華凛に言われなくたってこれからは遠慮なくガツガツいくわ」

「さすが瑠香……!肉食系!」

「うるさいなぁ」

わたしと瑠香はケラケラと笑い合った。

瑠香とも仲直りもできたし、わたしがするべきことはあと一つだけ。

雨宮くんに自分の気持ちを伝える。

「でね、わたし、雨宮くんに告白することにした!!」

「……は!?なに、唐突に……!」

「だって、好きになったら気持ちを伝えるものでしょ?」

気持ちを、彼に伝えたい。

例え受け入れてもらえなくても、それでもこの想いを雨宮くんに……。

「雨宮パワー半端ないね」

「え?何それ」

「華凛、雨宮くんと出会ってなんか変わったよ。」

「そ、そうかな?」

「うん。たくましくなったよ」

瑠香はにっこり笑ってわたしの背中をポンッと叩いた。

「お互い頑張ろう!」

「うん!」

瑠香の言葉に励まされ、わたしは大きく頷いた。
とはいっても、どうやって告白したらいいんだろう?

雨宮くんの周りには常にたくさんの女子がいる。

隣の席に雨宮くんがいるのに、言葉を交わすことすらなかなか難しい。

言葉を交わすことすら……?

そうだ!言葉を交わせないならばメッセージを送ればいいんだ……!

とんでもない閃きに自分の心の中でガッツポーズしながらポケットから取り出したスマホで雨宮くんにメッセージを送る。

【あのね、雨宮くん。放課後、屋上に来てもらえないかな】

わたしは震える指で画面をタップしてメッセージを作り終えると、ハァと息を吐いた。

あとは送信ボタンを押すだけ。

これを押せばもう後には戻れない。

よしっ、押すぞ。押す……3、2、1。

手元のスマホがブルブルと震えた。

【雨宮くん:今日の放課後一人で屋上にきてくれない?】

あれっ、わたしが送る前なのに、なんで……?

【うん。わかった】

ドキドキしながら私は雨宮くんの返事をした。



昼休み。

「今日……わ、わ、わたし……雨宮くんに告白するから」

「おい、大丈夫かよ。そんなんで」

「ちょっと、もうすこしリラックスしなきゃダメじゃん!!」

「そ、そうなんだけど告白なんて今までしたことがなかったから……」

直と瑠香が目を見合わせて苦笑いを浮かべる。

自分で決めたはずなのにいざ告白するとなると緊張と不安が交互に波のように訪れて気持ちが落ち着かなくなる。

「でも、まぁよく告るって決めたね。すごいじゃん」

「そ、そうかな……?」

「華凛は雨宮くんと出会ってほんと変わったよ。彼に出会う前はいつもどこかオドオドしてて自分に自信ないって感じだったじゃん。もちろん今もコミュ症なのは変わらないけど、なんか前とは違うよ。これが恋のパワーってやつかね」

瑠香の言葉がストンっと胸の中に落ちてくる。

確かにわたしはずっと自分に自信がなかった。

コミュ力は底辺だし、いつもオドオドしてて。

だけど、今、誇れることが一つだけある。

わたしは雨宮くんが好きだ。

雨宮くんを想う気持ちだけはこの世で一番だと言い切る自信がある。

ちょっと照れくさいけれどわたしの頭の中は100%雨宮くんで満たされていて、雨宮くんのことばっかり考えてしまっている。

他の男の子が入る余地なんて1ミリもないぐらいに。

24時間、ずっと頭の中にあるのは雨宮くんのことだけ。

「悔しいけど、確かに雨宮と出会ってから華凛変わったかもな」

直がため息をつきながらそう言った瞬間、「あのさ」と瑠香が直と向かい合わせになった。

「こんな時にあれだけど、あたしじゃ華凛の代わりにならない?」

「はっ、えっ、どういう意味?」

「だから、あたし前から直が好きなんだよね」

「はっ?る、瑠香が俺を……?」

「そう。直は華凛のことが好きだって知ってたからずっと黙ってたけど、今はいい機会かなって」

「う、嘘だろ?」

「嘘じゃないよ。ずっと好きだったの」

「えっ、マジか……」

直が口に手を当てて考え込む。なんだか少しだけ顔が赤らんでいる気がする。


「つ、つーかさ、ごめん。今、急だし色々考えらんないけどさ……」

「うん」

「華凛の代りとか、そういうこと言うなよ。瑠香は瑠香じゃん」

直の言葉に瑠香はほんのわずかに驚いたように目を見開いた後、ニッと笑った。

「やっぱ、直のこと好きになってよかった」

「いや、好き好き言われるとマジ照れるからやめろって……!」

「ふふっ。直、ちょっと、照れてるの~!?」

「うるせぇな!華凛は黙ってろ!!」

わたしが煽ると、直は更に顔を真っ赤にする。

二人の恋が始まるのも時間の問題かもしれない。

わたしにとって瑠香は大切な親友で、直は幼なじみだ。

二人が付き合うことになったらこれ以上の幸せはない。

私は心の中で二人にエールを送った。

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