「好き、って言ってもらっちゃった!!!華凛、だってぇえぇー!!どうしよう。嬉しい。嬉しすぎるぅぅぅぅーー!!!」
わたしはただひたすら蒼とのことを思い出してベッドの上で悶絶していた。
初恋は実ることはないってよく聞くけど……
「どうしよう……。幸せ過ぎてどうかしちゃいそう……!」
私が蒼の彼女で、蒼が私の彼氏……。
考えただけで胸がドキドキしてきちゃう。
夜になると蒼からメッセージが届いた。
【雨宮蒼:週末、暇?】
【暇だよ】
【雨宮蒼:じゃあ、どっか遊びいかない?】
【それってデート?】
【雨宮蒼:デート】
【いく!】
【雨宮蒼:返事はや 笑】
【だって楽しみだから】
【雨宮蒼:俺も。ちゃんと寝ろよ】
【うん】
【雨宮蒼:おやすみ】
【おやすみ】
「蒼とデート……。どうしよう。楽しみすぎる!!」
メッセージを終えて再びベッドの上で叫ぶ。
でも、男の子とデートなんて初めてだし……。
「何着ていったらいいの……?それに、髪型も……。あぁ、どうしよう!!不安になってきた!!」
わたしはクローゼットを開け、週末のデート服に頭を悩ませたのだった。
「華凛、雨宮くんと付き合うことになったんでしょ??おめでと!!」
翌日、わたしの元へ駆け寄り自分のことのように喜んで祝福してくれた瑠香。
「ありがとう、瑠香。瑠香はどう?直と。昨日一緒にクレープ食べに行ったんでしょ?」
「うん。そのあと、見たい映画があるって誘われて映画に行ってきた。で、家まで送ってもらったんだ」
「そっか。よかったねぇ!」
「来週、違う映画も見ようって約束した」
「へぇ~!直と瑠香、良い感じだね!」
瑠香の表情を見ると乙女モード全開だ。わたしまで嬉しくなる。
ガラガラっと教室の扉が開いて蒼が入ってくる。遅刻ギリギリだ。
「あっ、おはよう」
「おはよ。なんか眠そうな顔してない?」
「うん……。実は昨日なかなか眠れなくて」
「なんで?」
「なんでって……それは……」
蒼に好きって言ってもらったり、何度もキスしたりしたから……。
それと、デート服がなかなか選べなくて。
って、そんなの恥ずかしくて言えない!
「蒼こそ、遅刻ギリギリだけどちゃんと寝れた?」
「……ああ。ちょっと呼び出されて」
「え?呼び出しって先生?」
「違う」
「じゃあ誰に?……もしかして……女の子に呼び出されてたの?」
「……まあ」
告白……されたんだ……。
そりゃそうだよね。蒼はモテるし、女子から告白されてもしょうがない。
でも、やっぱり悶々としちゃうよ。
あれこれ考えていると、蒼がわたしのことを見てくすっと笑った。
「そんな顔するなって。ちゃんと言ったから」
「え?」
「大切な彼女がいるから付き合えないって」
「……蒼……」
「俺、華凛を不安にさせることは絶対にしないから。だから、心配事とかあるなら全部言って?」
「ありがとう」
そのとき、廊下で女子の騒ぐ声がした。
「えっ、嘘。雨宮くんと花山さん付き合ってるの!?」
「マジで!?」
「ヤバくない。超ビックカップルじゃん!」
「美男美女だし!!!」
廊下がザワザワと騒がしくなり、他のクラスの生徒たちが扉付近に集まり教室の中を覗き込む。
「う、噂って早いんだね……」
すると、蒼が私の肩を引き寄せて男子たちに向かってにっこり笑った。
「俺と華凛付き合い始めたんだ。だから、俺の彼女に手出さないでね」
蒼のその言葉に教室中の女子達が絶叫した。
男子も蒼のあまりにストレートな言葉に面食らっていた。
付き合ってるって言ってくれた……。
彼女って……わたしのこと彼女ってみんなのまえで言ってくれた……。
蒼の言葉が嬉しいのに、みんなに知られて恥ずかしい気持ちもあって。
でもやっぱり幸せでわたしは俯きながら顔を真っ赤にして幸せを噛みしめるように唇を噛んだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!