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第20話

好きになるのはキミ限定
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2022/07/23 01:45
【雨宮蒼side】

週末、俺と華凛は水族館にやってきた。

華凛との初デート。気持ちがソワソワして落ち着かない。

「わぁ~、見て!蒼!あのペンギン可愛い~!」

「いや、お前の方がよっぽど可愛いよ」

「え?何か言った?」

「別に。なんでもない」

館内を見て回る。

私服姿の華凛はいつもより輝いてる。

普段はあまりしないメイクをしているせいか大人びて見えてドキドキする。

「……蒼?どうしたの?」

目が合うと、華凛は不思議そうに俺の顔を覗き込む。

丸く大きな瞳に俺が映っている。

照れ臭さを隠すために俺はショーケースの中の魚を指さした。

「ていうか、あそこにいる魚、華凛に似てるな?」

「え……、ってひどい!全然似てないもん」

「ははっ、冗談だって」

「もう!蒼ってば」

コロコロと表情の変わる華凛が可愛くて仕方がない。

まさかこんなにも好きになれる相手が見つかるなんて思っていなかった。

出会った瞬間……目が合った時から俺は華凛にどうしようもなく惹かれていた。

華凛が望むことならひとつ残らず叶えてやりたい……そんなことまで考えているなんて。

華凛と出会ってからの俺はどうかしてる。

でも、それぐらい華凛のことが好きなんだ。


「あっ、あっちにチンアナゴがいる!」

「――おい、華凛、危ない」

「っ……」

人にぶつかりそうになりとっさに華凛の腰を引き寄せると、よろけた華凛の体が俺の体にぶつかった。

「ちゃんと前見て歩かないと危ないよ」

「ご、ごめん……。ありがと」

顔を覗き込むと、華凛は頬を真っ赤に染めて目を潤ませながら俺を見上げた。

「蒼とのデートが楽しくてついはしゃぎすぎちゃった……」

ドクンっと心臓が鳴る。

そんな可愛いこと言われると正直困る。

顔がにやけそうになるのをおさえられないから。

「そういう可愛いこと無自覚で言うから怖いんだよな」

「え……?」

「まあ俺も楽しいんだけどさ」

俺はそっと華凛の手をとった。

「こうしてれば大丈夫。俺から離れないように」

「う、うん……。分かった」

照れ臭そうにはにかむ華凛の顔をずっと隣で見ていたい……。


「てかこのあと、アシカのショーやるって。見に行く?」

「うん!行く!」

手を差し出すと、華凛はぎゅっと俺の手を掴んで微笑んだ。


楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。

外に出ると辺りはもう薄暗くなっていた。

駅までの道を歩きながら俺はポケットから取り出したものを華凛に手渡した。

「はい、これ」

「え?なに……?」

「さっき華凛がトイレ行ってるとき買っておいた」

「これ、わたしがさっき欲しいって言ってたペンギンのキーホルダー?」

「そう。で、これが俺の」

チェーンがピンクと水色でお揃いになっている。

「嬉しい……。ありがとう。わたし、これ学校用のバッグにつけるね」

「俺もそうする」

「ふふっ、お揃いだね」

嬉しそうに微笑む華凛。

「これから付き合っていく時間が増えるたびにこうやって二人の思い出も増えていくんだね」

「うん。次は何したい?」

「えっと……夏祭り……行きたいかな。浴衣着て彼氏とデートするのずっと夢だったの」

「じゃあ、そうしよう。華凛の浴衣姿早く見たい」

絶対可愛いし。

「……あっ……でもね、本当は……蒼と一緒ならどこへ行っても何をしてても楽しいと思うの」

「華凛……」

「わたしね……、ずっと……蒼と一緒にいたい」

華凛がポツリと呟く。

繋がれた手にぎゅっと力を込めると、華凛もそれに応えるように俺の手を握り返す。

「華凛が望んでくれるなら、俺はずっとそばにいるよ」

「蒼……」

俺は立ち止まって華凛を見つめた。

見つめ合う俺達。言葉がなくても、俺達の気持ちはたしかに一つだった。

やわらかい笑みを浮かべた華凛につられて、俺も笑いかける。

温かく優しい時間が流れる。

――絶対に大切にする。

俺は幸せを噛みしめながら心の中で誓った。


【END】


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