第73話

占拠68
1,242
2024/07/03 14:00
和 泉 さ く ら
   そこで、 乃楽さんの両親は、 孤児院のことは思い出させることなく、 貴女を育てることを決めた   







乃 楽
   なんでっ…   







和 泉 さ く ら
   貴女がまた、 事件の記憶を思い出してしまうかもしれなかったから。 実際、 記憶を失う前の貴女は、 孤児院の前に行くと、 事件の記憶が蘇り、 震えていたから…   







大 和 耕 一
   何故、 そのままにしたんですか? 理由があろうとも記憶を人の手によって失わせるのはあってはならないことなのでは?   







和 泉 さ く ら
   …公安は、 こう言っていた   















20年前 ~和泉side~













   今、 私たちは先日起きた孤児院事件に追われている。   












   最初は男の一方的な子どもを狙った犯行だと、 思っていた。   












だが、 調べていくうちに悲しい事実に私たちはぶつかったのだ。












   新しい技術をあなたの下の名前ちゃんに試験的に行ったところ、 孤児院に居たという記憶まで消えてしまった。   












しかも、 その消された記憶をそのままにすると上が私たちに言った。












和 泉 さ く ら
   っ…   







刑事
   上が言うなら、 しょうがないか…   







和 泉 さ く ら
   しょうがなくないっ…!!   







刑事
 え…? 和泉、   







   私はしょうがないと言った同僚を置いて、 警察庁内を走った。   












上官を追った。












和 泉 さ く ら
   っ…しょうがなくない、 絶対ダメだ…!   







少し走った先に、 先程事を伝えに来た上官が居た。












私はその人の腕を掴んだ。












上官
   …なんだお前は   







和 泉 さ く ら
   たとえ、 記憶を戻すことが出来なくても、 しっかり事実を話して謝罪をすべきです!!   







和 泉 さ く ら
   それが、 私たちの仕事なのでは!? 







上官
   話して何になる? それに、 小さな子どもや若い夫婦に我々が悪というイメージが着く方が問題だ   







和 泉 さ く ら
   そんな事でっ…   







当時、 下っ端の下っ端だった私の意見なんて到底採用されることも、 まともに聴いてもらえることもなく、 この事件は幕を閉じた。












私ひとりでも、 乃楽さん一家に謝罪に行こうとしたが、 上官の腕を掴んで、 反論したということで、 私はしばらく監視されながらの事務業務に追われてしまったため、 この事実を誰も知ることなく時間が経ってしまった。












この事件は、 私たち警察がより残酷にしてしまったのだ。

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