第12話

すれ違いとヒカルくんの乙女な告白
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2019/06/21 09:35
別荘地での遊佐くんとの逢瀬は、ことごとくEカップ悪魔とキラキラ悪魔に邪魔された……。

撮影はあっけなく終わり、みんなそれぞれの家へと帰宅した。



夏休みも中盤、私は夜の学校にて文化祭の準備中。
心美
心美
夏はまだこれから……!
邪魔されず二人きりで花火大会に
そうだ、スイカ割りもしたい!
心美
心美
目隠ししてスイカ割り……
なにそれ、すごくスケベだ!
遊佐
遊佐
何ぶつぶつ言ってんだよ
ペンキ、はみ出してんぞ
心美
心美
うわ!
心美
心美
(でも、学校にEカップ悪魔はいないし、やっと二人きり!次のデートの約束しなきゃ!!)

夏休み明けは文化祭。

2クラス合同のお化け屋敷準備のため、遊佐くんと2人きりになれた。

やっぱり学校では超ダサいキノコメガネだけど、腕まくり姿はまた格別。
心美
心美
(さ、最高! 腕まくり…釘を打つたびに腕の筋が浮き出て……ああ、あの釘になりたい!!打たれたい!!)

興奮で手元が震え、"お化け屋敷"の文字はいい感じにおどろおどろしくなった。
遊佐
遊佐
ふぅ、腕疲れんなこれ
心美
心美
!?
心美
心美
(しゃ、しゃがんだ腰元からパンツが…!遊佐くん、今日のパンツ何色なんだろう。く、見えそうで…見えない!)
スケベアー1号
スケベアー1号
必殺☆
スケベアー2号
スケベアー2号
遊佐のパンツを透視!!
スケベアー3号
スケベアー3号
はああああああああああああ
スケベアー4号
スケベアー4号
赤色!!!
心美
心美
え?!赤?!
スケベアー達が半ば信じがたい必殺技を繰り出した。
遊佐
遊佐
赤のペンキ?
それならこっちに
心美
心美
(声に出てた?!)あ、ありがと
心美
心美
(それにしても赤…!勝負パンツなの?聞いていいかな……でもそれって、遊佐くんにパンツ赤色?って聞くの?!そんなの、そんなの……)
遊佐
遊佐
おい……
心美
心美
遊佐くん今日のパンツ、赤色?
遊佐
遊佐
は?
心美
心美
(聞いちゃった……)
遊佐
遊佐
はぁ、お前いつもそんな
くだらないことばっか考えてんの?

なぜかいつもより刺々しい言葉が返ってきた。
心美
心美
くだらないって……
パンツの色は大事だよ!
だって遊佐くんのパンツだよ?!
遊佐
遊佐
こっちはアイツ、、、
ヒカルのことで悩んでるってのに
心美
心美
ヒカルくん?
遊佐
遊佐
お前、好きって言われただろ
なんではっきり断らないわけ?
遊佐
遊佐
あーーー、わかった…
アイツのこと好きなんだろ?
心美
心美
な! 違っーー
遊佐
遊佐
まじで無神経スケベ
こっちは不安なんだよ、
少しは俺の気持ちも考えろよ!
珍しく怒鳴った彼。言葉がグサリと胸にくる。
心美
心美
(不安…… 私、遊佐くんの気持ち
考えてなかった…?)
遊佐
遊佐
あーくそ、頭冷やす
彼は髪をぐしゃぐしゃと掻き乱し、私を置きざりにして校舎の中へと入っていった。
紗季
紗季
心美ーー!!ピンチ!!
腕がちぎれるーーーー!!

追いかけるヒマもなく、
私は重い木材を抱えたさっちょんに呼ばれた。





紗季
紗季
私、ヒカルくんに告白する
さっきの喧嘩で悩む私に、さっちょんは言い放つ。
紗季
紗季
ほら、キスすると恋が叶うって伝説の
美術棟の薔薇アーチ!
文化祭の頃満開になるんだって
心美
心美
(伝説の薔薇の下で告白するんだ……
さっちょんは、本気だ。でも……)
紗季
紗季
私知ってるよ
ヒカルくんが心美を好きってこと
心美
心美
?!
紗季
紗季
でも心美は遊佐が好き、そうでしょ?
心美
心美
うん、そうだよ
紗季
紗季
心美は遊佐、私はヒカルくん、
ヒカルくんは心美が好き、
ただそれだけのこと。
紗季
紗季
私達が親友ってのは変わらないから
心美
心美
さっちょん……
紗季
紗季
なーに泣きそうな顔してんの?
私はせっかくのチャンスに
風邪を引いた自分が一番憎い!
心美
心美
さっちょん……!私も頑張る!
遊佐くんと仲直りする!!
紗季
紗季
え、喧嘩してんの?
さっちょんはやっぱりかっこいい。

私はヒカルくんの気持ちをきちんと断って、もう一度遊佐くんに気持ちを伝えようと誓った。




外とは違って明るい校舎の中、遊佐くんを捜す……
階段の踊り場に彼の足を見つけた。
心美
心美
遊佐くん…
遊佐
遊佐
あはは!!
お前、相変わらずだな

さっきとは打って変わって声色が高く、楽しそうな彼の声。
遊佐
遊佐
もしもーし? 聞こえる?
わりぃ、今こっちも文化祭準備
そうだ文化祭お前も来いよ!
心美
心美
(電話?)

スマホから微かに女の子の声が聞こえて、
思わず階段にしゃがみこんで身を隠す。
心美
心美
(お、女の子?!)
遊佐
遊佐
はは、お前いつも甘えすぎ
いいよ案内してやる、それに……
遊佐
遊佐
あぁ~、彼女は、、
俺、、別れようと思ってる
心美
心美

別れようと思ってる

        別れようと思ってる
  

 別れようと思ってる

          別れようと思ってるーー

息が止まった。

不安と混乱で前が見えなくなり、私はその場から逃げだした。
心美
心美
(別れる……?そんなこと一言も……。それほど不安にさせてたってこと?)

涙が滲んで前がみえない。

ヒカル
ヒカル
あ、心美ちゃん!!
ちゃんと話がしたくて…って大丈夫?!

涙でぼやけた私の手を引いたのはヒカルくんだった。














連れてこられた外階段は夜風が気持ちよくて、少し気分が落ち着いた。
ヒカル
ヒカル
涙、止まった?

真っ白なハンカチで私の頬を優しく拭うヒカルくん。
ヒカル
ヒカル
また理人のせい?
心美
心美
そういえば前も慰めて……
ヒカル
ヒカル
うん、僕は心美ちゃんが好きだから
悲しいときは慰めたいし、側にいたい
心美
心美
ごめんなさい。 
私は、遊佐くんが好きだから
ヒカル
ヒカル
わああーー!
今のは告白じゃないから!!
ちゃんと言わせて!
ヒカル
ヒカル
心美ちゃん、好き……です!
ヒカル
ヒカル
ああ、もう全然かっこつかないな
顔を真っ赤にしたヒカルくんの声は、少しだけ震えていた。
心美
心美
ごめんなさい。何度言われても私は

遊佐くんが、と言おうとしたら人差し指で言葉を封じられた。
ヒカル
ヒカル
あいつじゃないとダメなのは……
十分わかってる。でもまだ断らないで
ヒカルくんは泣きそうに笑った。
ヒカル
ヒカル
それに、こうやって泣かせる理人より
僕のほうが幸せにできる。あいつは…
ヒカル
ヒカル
あいつは僕の初恋を奪ったんだ
心美
心美
え…
ヒカル
ヒカル
僕がその子を好きだって知りながら
お揃いのキーホルダー、映画に、
カフェデート、全部僕に隠してた
ヒカル
ヒカル
アイツは、大事なことを隠すんだ
だから心美ちゃんにも……
何か隠してるかも
心美
心美
そんなこと……

でもそれ以上、言葉が出なかった。



遊佐
遊佐
別れようと思ってるーー

彼の声が頭の中でこだまする。
ヒカル
ヒカル
夏休み明けの文化祭1日目
あの薔薇の下で待ってるからね

ヒカルくんはそう言い残し、去っていった。


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