別荘地での遊佐くんとの逢瀬は、ことごとくEカップ悪魔とキラキラ悪魔に邪魔された……。
撮影はあっけなく終わり、みんなそれぞれの家へと帰宅した。
夏休みも中盤、私は夜の学校にて文化祭の準備中。
夏休み明けは文化祭。
2クラス合同のお化け屋敷準備のため、遊佐くんと2人きりになれた。
やっぱり学校では超ダサいキノコメガネだけど、腕まくり姿はまた格別。
興奮で手元が震え、"お化け屋敷"の文字はいい感じにおどろおどろしくなった。
スケベアー達が半ば信じがたい必殺技を繰り出した。
なぜかいつもより刺々しい言葉が返ってきた。
珍しく怒鳴った彼。言葉がグサリと胸にくる。
彼は髪をぐしゃぐしゃと掻き乱し、私を置きざりにして校舎の中へと入っていった。
追いかけるヒマもなく、
私は重い木材を抱えたさっちょんに呼ばれた。
さっきの喧嘩で悩む私に、さっちょんは言い放つ。
さっちょんはやっぱりかっこいい。
私はヒカルくんの気持ちをきちんと断って、もう一度遊佐くんに気持ちを伝えようと誓った。
外とは違って明るい校舎の中、遊佐くんを捜す……
階段の踊り場に彼の足を見つけた。
さっきとは打って変わって声色が高く、楽しそうな彼の声。
スマホから微かに女の子の声が聞こえて、
思わず階段にしゃがみこんで身を隠す。
別れようと思ってる
別れようと思ってる
別れようと思ってる
別れようと思ってるーー
息が止まった。
不安と混乱で前が見えなくなり、私はその場から逃げだした。
涙が滲んで前がみえない。
涙でぼやけた私の手を引いたのはヒカルくんだった。
連れてこられた外階段は夜風が気持ちよくて、少し気分が落ち着いた。
真っ白なハンカチで私の頬を優しく拭うヒカルくん。
顔を真っ赤にしたヒカルくんの声は、少しだけ震えていた。
遊佐くんが、と言おうとしたら人差し指で言葉を封じられた。
ヒカルくんは泣きそうに笑った。
でもそれ以上、言葉が出なかった。
彼の声が頭の中でこだまする。
ヒカルくんはそう言い残し、去っていった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。