遊佐くんの唇がゆっくりと離れていく。
混乱したままの私を放って、彼は怒った顔で試着室のカーテンを勢いよく開けた。
突然開けられた試着室にさっちょんとヒカルくんはびくりと肩を揺らした。
私は慌ててみっともない鼻血を拭った。
その時、さっちょんの背後に黒い影が忍び寄る。
真っピンクのパンティーを頭に被った変態おじさんが、荒い息でさっちょんへと手を伸ばす。
ヒカルくんがとっさにさっちょんを庇い、彼がおじさんに拘束されてしまう。
ヒカルくんの身体を撫でる、気持ちの悪い手。
こ、こんなのどうしたらいいの?!
その時――
ゴッ!!
遊佐くんは変態おじさんの顔面に、回し蹴りをくらわせた。
ヒカルくんは驚いた顔で固まる。
しかしおじさんはめげずに、あろうことか遊佐くんへとターゲットを変えた。
止めるリセイウチを振り切って飛び出そうとしたけど、怖くて足がすくむ。
スケベアー達は必殺技を繰り出そうと機会を伺う。
しかし次の瞬間、ヒカルくんが遊佐くんを庇うようにおじさんの腕をぎりぎりと締め上げた。
遊佐くんはヒカルくんの行動に目を見開いた。
おじさんのズボンが呆気なくストンと落ちた。
おじさんの可愛らしいリボン付きのパンティーが露わになり、見るに堪えない光景。
そこへ騒ぎを聞きつけた店員や客が集まり、変態おじさんはあっという間に警備員に引きずられていった。
私達はそのまま、近くの喫茶店で一息つくことにーー
庇い合った双子はなんだかむず痒い雰囲気。
さっちょんと私は思わず目を見合わせた。
口を開いたのは遊佐くん。
彼は口を開けたまま固まった。
じーんと目の前の光景に浸っているとヒカルくんが口を開いた。
慌てるさっちょんの手を握りヒカルくんはスタスタと出口へと歩く。
少し晴れやかなヒカルくんはさっちょんを引っ張り喫茶店から出ていった。
もしかしたら、この双子は喧嘩しているくらいが丁度いいのかもしれない。
いつ切り替わったのか、
ドSの遊佐くんが私の頬をガッと掴み蠱惑的に笑う。
独占欲の強いドSは、やはり健在。
更に彼は有無を言わせない満面の笑顔で一言。
ああ、スケベの神様。
なぜこの遊佐理人にここまでの色気をお与えになったのでしょう。
私は鼻血を吹き出すとともに、大きく頷いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!