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第23話

スケベな許婚、現る


私は昼休みに遊佐くんを屋上に呼び出して、
こっそり二人きりでお昼ごはん。


遊佐
遊佐
許婚?!

少し肌寒い秋の屋上に、遊佐くんの声が響いた。


彼は、手を滑らせて危うく食べかけのコロッケパンを落としそうになっている。
心美
心美
私も初耳だったんだ
子供の頃に親が決めたらしくて……
遊佐
遊佐
相手、誰だよ?

乱暴にメガネを取った彼は、
明らかに不機嫌オーラ全開で私の顔を覗き込んだ。


むっとした彼の顔がすごく近い。

唇がコロッケパンの油で艶めいていて……なんだかすごく美味しそう。
心美
心美
……っ、おじいちゃんと
喧嘩しちゃって詳しくは聞けてないの
心美
心美
それに今日から門限5時で
無断外泊はもちろん禁止…
心美
心美
(あの夜のリベンジ、まだなのに……)


スケベアーも脳内で泣きながら大ブーイング。

私の方が泣きたいくらい……。
遊佐
遊佐
もしかしてそれ、俺のせい?
心美
心美
ち、違う!
あの日私がちゃんと家に
連絡してればよかったの!

遊佐くんは深く息を吐いた。

遊佐
遊佐
……わかった
じゃあ、今日の放課後空けといて
心美
心美
え? でも門限が!
遊佐
遊佐
大丈夫、お前の家に行くから
じーちゃんに会わせろ
心美
心美
遊佐くん……! いいの?
遊佐
遊佐
いいも何も、彼氏の俺がちゃんと
挨拶すべきだろ
遊佐
遊佐
…お前のこと、大事だし

そう言って彼はコロッケパンのソースが付いた親指をぺろりと舐めた。

心美
心美
(か、かっこいい……!ああ……その親指になりたい。ううん、いっそ遊佐くんの一部になりたい!!それくらい…)
心美
心美
大好き…

思わず好きが口からこぼれ落ちた。
遊佐
遊佐
ん? なんて?

からかうような笑顔はドSの顔。

さっきまでの甘い彼はどこへやら、じりじりとキョリを詰めて私を見つめる。
遊佐
遊佐
もう一回言えよ……大、なに?

顔をそむけようとしたらむぎゅっと頬を掴まれ、強引に上を向かされる。

この顔、絶対に聞こえてた!! 

顔に熱が集まるけど、振り絞るように声を出す。
心美
心美
だいすき……
遊佐
遊佐
知ってる

そう言って不意に彼が近づいたと思ったら、私の唇にキスをして……頬にガブリと噛み付いた。
心美
心美
いたっ!
遊佐
遊佐
ご飯粒、ついてた
ごちそうさま

そう言って勝ち誇ったように笑う彼。

私は鼻血を垂れ流し、超ド級のSに完全敗北した。






暗くなるのも早くなった放課後。

遊佐くんに準備があるから先に帰ってほしいと言われ一人帰路につく。
心美
心美
(遊佐くん以外の許婚なんて絶対に嫌。おじいちゃん…わかってくれるかな)
リセイウチ
リセイウチ
嬢ちゃん、まず心配させたことを
謝るのが先や思うで

リセイウチの言葉にはっとする。
心美
心美
(…心配、してたと思う?)
リセイウチ
リセイウチ
当たり前や
心美
心美
(そっか…、まずは謝らなきゃね)


そう意気込んで、思い切って玄関のドアを開けると、誰もいない。



心美
心美
あれ、おじいちゃん? ただいま……



いつもなら天井板から顔を出すはずなのに。

すると足元に見慣れないスニーカーが転がっていた。
心美
心美
え……これ、誰の?
??
??
やーっと、帰ってきた
オレのスケベちゃん
心美
心美

リビングから我が者顔で出てきたイケメンに突然腕を引かれ、抱きしめられた。

男っぽいの香水の匂い。

遊佐くんとはまた違う胸のざわめき。



まるでスケベの本能がこの人だと言っているかのように、ビリビリと身体に電流がかけぬける。

スケベアー1号
スケベアー1号
緊急スケベ警報発令…!!
スケベアー2号
スケベアー2号
こいつ……あの時の……!?
スケベアー3号
スケベアー3号
あの時のノーパンイケメンだ!!
スケベアー4号
スケベアー4号
危険だ心美、離れるんだ!!
スケベアー?
スケベアー?
失礼ね! 
風助はこの子の許婚よ?
危険じゃないわよ!!

目の前で真っピンクのクマが猛抗議。
心美
心美
やっぱりあの時の!
……って、許婚?!
風助
風助
そうアンタの未来の旦那サマ、
たいら 風助ふうすけ。オレのこと覚えてる?
 
耳元をくすぐるのは、
フェロモンだだ漏れなハスキーボイス。


忘れるはずがない。

スケベパワーを操るイケメン、私と同じスケベの化身を持つ男。


心美
心美
あ、あの時は助けてくれてありがとう!
……だから離してっ
風助
風助
だめー


抱きしめる力は強くないのに、私の体が離れたくないと言ってるみたい。

安心とすけべが入り混じる遊佐くんの腕とは違う。

もっと本能的な何かがこの人にはある。
風助
風助
本当に覚えてねーの? 
オレらもっとずっと前に会ってるのに
心美
心美
え?

気を緩めた瞬間、ドン!と玄関のドアまで追い込まれる。

脚の間に入ってきた彼の膝のせいで、全く動けない。

心美
心美
もっと、ずっと前…?
風助
風助
やっぱ覚えてねーよな……

私の顔を見て、少し悲しそうに笑った彼。

その横で、真っピンクのスケベアーがぎゃあぎゃあと叫ぶ。

スケベアー?
スケベアー?
あんた、いい加減にしなさい! 
風助はね、あ――
風助
風助
やめろ!

彼の一言でスケベアーはぽんと音を立てて消えた。


うなだれるように私の肩に頭を乗せる彼。

でも両親の事故以前のことは鮮明には思い出せない。



だって、幸せは思い出すと辛いから。


心美
心美
あの、ごめんなさっ
その時、
真後ろのドアがガチャリと音を立てて開く。


ドアに押し付けられていた私と真正面の彼はバランスを崩してーー




ドサッ!!


風助
風助
ん!!
心美
心美
んう!?


一瞬重なる唇と唇。

わたしの中で何かがパチンと弾けて、思い出の欠片がフラッシュバックする。

ーー
ーーーー
??
けっこんしよーね!!
両親に囲まれたひだまりの中で、まだ小さな私とかわいい男の子が笑いあう。


ーー
ーーーー





心美
心美
あれ……今
風助
風助
わりぃ
今のはスケベな力とかつかってねーから

申し訳無さそうに謝る彼にはっとして身を起こそうとする。

でも、すぐ後ろにもうひとりの気配。






遊佐
遊佐
お前……

怖いくらい無表情な遊佐くんが私達を見下ろしていた。