ぶ
く
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く
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私は、遊佐くんのパンツになった。
黒い上質な布で、彼にピッタリのボクサーパンツ。
彼の大事な部分と超絶セクシーなヒップラインを程よい圧でガードする。
そう、今まさに遊佐くんのパーソナルエリアを守っている最中だ。
私は嬉しかった。
そう思っていたのにーー
遊佐くんはロケバスで着替えを始めた。
勿論パンツだから抵抗はできないし、声もでない。
するりと何の抵抗もなく脱がされた私は、バスの座席に置かれた。
そして私よりピッチリした競泳水着が彼のお尻をガード。
よく考えると遊佐くんは明日、他のパンツを履く。
それにパンツは消耗品。
ゴムが緩んで生地が傷めばいずれ……。
心からの叫びは届かなかった。
じわじわと悲しみが襲う。
パンツから涙は出ないけど繊維がわずかに軋んだ。
その時、彼は不意に折りたたまれた私を手に取り、熱い眼差しで私を見つめた。
そして彼は深い口づけをした。
苦しいくらいの熱いキスは終わらない。
酸素不足でクラクラと視界が回る。
ひどい酸欠の中、心の中で誓った。
ゴホッ!!
口から大量の海水が溢れ出す。
なんだか長い夢を見てたみたい。
息苦しさから解放されゆっくりと目を開ける。
すると、びしょ濡れの遊佐くんが必死の表情で私を見下ろしていた。
遊佐くんは突然、私を強く抱きしめた。
微かに震える背に腕を回す。
興奮MAXのスケベアー達。
私は勢いよく鼻血を吹き出し、また意識を失った。
再び目を覚ました私は、カーテンに仕切られたベッドの上にいた。
まだ覚醒していない頭の中で、リセイウチがスケベアー達に激怒している。
その一言でスケベアー達はしゅんと落ち込んで脳の隅っこへと退散していった。
そんな時、ドアが開く音と誰かの声が聞こえる。
カーテンの隙間からこっそり覗くと、遊佐くんにお姫様抱っこされたイズミさんがいた。
密着するEカップ。
そしてちゅっとリップ音が聞こえた。
信じられない光景で一気に脳が覚醒し、ゴウゴウと嫉妬の炎が燃え盛る。
遊佐くんは気にする素振りも見せずにイズミさんをベッドに寝かせ、こちらのカーテンに向かってくる。
とっさに私は布団を被り、寝たふりを決め込んだ。
すると遊佐くんの囁き声が私の耳をくすぐる。
寝たふりはバレバレのようで、小さなキスがおでこに降ってくる。
それ以上何も言わず、彼の足音は遠のいていった。
彼が出ていったと同時に、イズミさんが大声で叫ぶ。
彼女はまだ私が寝ていると思ってるみたい。
私はカーテンの隙間から彼女のたわわな”E“を恨めしく睨んだ。
すると彼女は挙動不審に辺りを見渡し、おもむろにその谷間に手を突っ込んだ。
スルリとそこから引っ張り出したのは上質な黒い布。
大興奮の彼女は私の視線には気づかず、パンツをぎゅっと抱きしめ頬ずりした。
はぁはぁと息が上がっていく彼女を見て、自分を見ているようで複雑な気持ちだ。
思わず声を出してしまった。
パンツを手にした彼女はこちらを見て固まった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。