第15話

修羅場とまさかのBL展開?!
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2019/07/12 09:51
南
お願い……遊佐とは別れて

繰り返すように南ちゃんは言った。

そしてポケットの中から大量のお菓子を取り出し私に押し付けた。


私はお菓子を受け取って真剣に答える。
心美
心美
やだ
南
……え?!
心美
心美
たとえ地球からスケベが消えても、
遊佐くんと別れるなんて絶対やだ!!
心美
心美
それに、私達が別れたとしてもあの二人の溝は根本的に解決しないでしょ?
南
でも……せめてこれ以上
仲が悪くならないようにって
心美
心美
私にいい考えがあるの!

おろおろする南ちゃんを連れて、私は学校伝説の薔薇アーチへと向かった。

なんでも、アーチの下でキスすると両思いになって恋が叶うらしい。


遊佐くんに連絡を入れて、南ちゃんをアーチの下へとセッティングする。
南
な、なにするの?
心美
心美
ここにいて!!
南ちゃんは過去とおさらばしなきゃ
南
え、ちょっとどこいくの?!
私は彼女の背をぽんと押して、近くの生け垣に身を隠した。

時刻は11時55分。
リセイウチ
リセイウチ
嬢ちゃん、何考えとんのや!
心美
心美
(何って、和解だよ! 中学の頃3人に何があったか知らないけど、拗れちゃってるならちゃんと話さなきゃ!)
リセイウチ
リセイウチ
修羅場にする気か!?
荒療治にも程があるやろ!
そんなのわかってる。

でも拗れた関係は土壇場でどうにかするしかない。


ヒカルくんは待ち合わせ時間ピッタリに、キラッキラのオーラで現れた。

そして私が呼び出していた遊佐くんも。
ヒカル
ヒカル
あれ?
ヒカル
ヒカル
み、南ちゃん……
スッとヒカルくんのキラキラオーラが消えた。
南
ヒカルくん……
遊佐
遊佐
南、なんでお前がここに?
……心美、あいつ!
遊佐くんは何かを察したように周囲を見渡した。
ヒカル
ヒカル
あ、えっと
僕は心美ちゃんと約束してるから
ヒカルくんは気まずそうに、くるりと方向転換して立ち去ろうとする。

その手を南ちゃんがとっさに掴んだ。
南
待って。……どうしてあの頃、
急に私達から離れていったの?
南
あんなに仲良かったのに、さ
ヒカル
ヒカル
そんなのお前ら2人が
一番わかってるんじゃないの?
遊佐
遊佐
おい、そんな言い方ないだろ
ヒカル
ヒカル
お前は黙ってろよ!
そもそも、お前が全部奪ったんだろ!
ヒカル
ヒカル
僕が南ちゃんを好きだって知りながら!
南
え……好き?
ヒカル
ヒカル
あ……
目をまんまるにして南ちゃんは固まった。
南
それ……本当?
ヒカル
ヒカル
本当だよ。
でもお前らが付き合ってんの知って、
僕は身を引いたんだ
南
付き合ってないよ!!
遊佐
遊佐
付き合ってねーよ!!
ヒカル
ヒカル
はあ?!
じゃあコソコソ二人で会ってたのは何?
南
遊佐に、相談してたの!
私がヒカルくんを好きに、
なっちゃったから……
ヒカル
ヒカル
……え……は?

ヒカルくんはまるで薔薇園の石像みたいに固まってしまった。
南
もしかして私達……
お互いに勘違いしてたってこと?
南
な、なんだ

吹っきれたように南ちゃんは笑った。
遊佐
遊佐
あの頃、二人でちゃんと話せって
俺言ったろ
ヒカル
ヒカル
それだけじゃ分かんないだろ!
お前のことだから、
からかってるのかと思ったし
遊佐
遊佐
はあ?
南
遊佐は私達の気持ち、知ってたんだ
なんでこっそり教えてくれなかったの!


ゴスッ。

遊佐
遊佐
うっ!! 相変わらずいってぇ……
心美
心美
(え、今すごい音しなかった…?
南ちゃん、小柄なのに……強い!)
遊佐
遊佐
つってもお前ら、あの頃ほとんど
俺の話聞かなかっただろ!
まじで挟まれる俺の身にもなれよ
南
う……それはごめん
ヒカル
ヒカル
……それは、悪かった
なんだかふわふわとした空気が流れ、誤解も解けて一件落着!


とはならなかった。
ヒカル
ヒカル
でも今度は身を引いたりしない
心美ちゃんは僕が幸せにするから
遊佐
遊佐
は? 何いってんだよ
心美は俺の彼女だろ……あぁそうか
遊佐
遊佐
もしかして、俺への嫌がらせで
心美を狙ってんだろ? だっせー
ヒカル
ヒカル
心外だな、僕は本気だよ?
誰かさんみたいに、泣かせたりしないし
ヒカル
ヒカル
あ〜、怖いの? 僕に取られるのが
遊佐
遊佐
黙れ
南
ちょ、ちょっと!
遊佐君がヒカルくんの胸ぐらを掴み、今にも殴りかかりそうな雰囲気。
リセイウチ
リセイウチ
ほれみぃ嬢ちゃん、修羅場や!
心美
心美
(ど、どうしよう……私のために争わないで!!的な乙女展開?!)
心美
心美
(でも実際間近で見ると冗談じゃない……!ど、どうしよう、私が今出てっても、拗れるだけだし……)

スケベアー達は野次馬のように修羅場観戦を始めた。
リセイウチ
リセイウチ
おい、スケベのお前ら!!
嬢ちゃんがピンチや!
どでかいのかましたれ!!

スケベアー達は、しかたないなぁと言う風に顔を見合わせ頷きあった。
スケベアー1号
スケベアー1号
必殺!!!!
スケベアー2号
スケベアー2号
ラッキーーーー
スケベアー3号
スケベアー3号
ス・ケ・ベ☆☆☆
スケベアー4号
スケベアー4号
はああああああああああ!!!
次の瞬間、突風が吹き真っ赤な薔薇の花びらが空に舞い上がった。

足を取られた遊佐くんとヒカルくんが前へとつんのめる。
遊佐
遊佐
むぐっ!
ヒカル
ヒカル
んうっ!

二人は薔薇アーチの下で禁断のキス。

花びらがひらひらと舞い落ち、美しい双子の唇がゆっくりと離れた。
遊佐
遊佐
い、……今、お前と
ヒカル
ヒカル
そ……それ以上は言うな!

2人は同時に口を押さえ、顔を青くして震えている。


その横で南ちゃんも震えている。
もちろん、笑いを堪えて。
心美
心美
(伝説の薔薇アーチの下でキスすると、両思いになって恋が叶うらしいけど……まさか、この二人が恋しちゃうの?!)

すると口を押さえていた遊佐くんが、するりとヒカルくんの頬に手を添えた。
遊佐
遊佐
お……俺、お前のこと……
心美
心美
(え、遊佐くんもしかして、私を捨ててヒカルくんを好きになっちゃったの?き、ききき禁断の双子愛?!)
遊佐
遊佐
やっぱ嫌いだわ
ヒカル
ヒカル
うん、僕もだよ
伝説は、所詮伝説。

ジンクスなんて信用ならない。


二人はお互いに、頬をギリギリとつねって牽制しあっている。



ゴスッ!!
    


  ゴスッ!!



遊佐
遊佐
うっ!
ヒカル
ヒカル
ぐはっ!
南
いい加減にして!
小さな体から繰り出されたこぶしは、それはもうパワフルだった。
南
仲直りするまで、2人とも
心美ちゃんと話すの禁止!!
遊佐
遊佐
はあ、俺は彼氏だぞ!?
ヒカル
ヒカル
これから告白の返事が!!
南
いいよね? 心美ちゃん?!


ぐいっ!!
心美
心美
うわ!!

南ちゃんに生け垣から引っ張り出されてしまった。

彼女の笑顔がなんだか怖い。
心美
心美
え、……あ、うん


その場にしゃがみこんで落胆する遊佐くんとヒカルくん。


心美
心美
(わ、私だって遊佐くんとの文化祭楽しみにしてたのに……!)
南
私、見張ってるから


にっこり笑った彼女の笑顔にゾッとしたのは、きっと私だけじゃない。








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