#車内
2人きりになると相変わらず何も言わないジン
私からもこれと言って話す話題もないから
そのまま外の景色をじっと眺める
すると
顔色ひとつ変えずにそう聞いてくるジン
さっきまでの彼は何処へ行ったのだろうか……ㅎ
だから、私も冷たくそう返してみる
返事をしながらハンドルを握り直すと
それ以上は話しかけてこなかった
彼が普段している事は癪に障るけど
今日迎えに来てくれたこと、
(頼んでないけど←)
一応お礼言った方がいいよね……?
もちろん返ってくるのは
低く、冷たい声
やっぱり…………そうなるよね
………………………………でも、
深い意味は無い
ただお礼を言っただけ
たったそれだけの返事が少し柔らかくなった気がした
突然の彼からの問に驚いた
しかも、昨日のこと
何も無かったとはいえ知らない男の家に泊まっただなんて
言えるわけがない
初めて彼に嘘をついてしまった
あからさまにホッとする彼を見て
嘘をついてしまった罪悪感と
なぜ今更そんな顔をするのか疑問で頭がいっぱいだった
再び車内は静まり返り
車のエンジン音しか聞こえない
暫くして赤信号で止まると
今日の彼はとことん理解できない
何を考えているのか……何がしたいのか……
しかしそんな顔をされて断ることも出来ず
ジンの顔を見ないでそう答えた
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!