『荼毘side』
その子は俺の存在に気付いておらず、そのまま突っ込んできて無事衝突。
「いたた…っ、ご、ごめんなさい…!」
エメラルドの瞳に、ストレートの黒髪。
あなたの髪色は茶色、ホークスは金髪。
どう考えてもこの子の遺伝子は、俺のものだ。
「ありがとう、!」俺の言葉を聞いて安心したような顔を見せたが、自分が追われている立場であると思い出し、すぐに逃げようとした。
でも、追いつかれて保護されて、ホークスの手に渡るのも時間の問題だろう。
女の子の襟首をぐっと掴んでおぶると、急いで走り出した。
「おじさんありがとう…助けてくれて」
廃ビルの中に身を隠すと、すぐにまたお礼を言われた。
この場面だけ切り取ってみると、ただの不審者でしかないが、本当に確認をするだけだ。
「日下鈴蘭」
それを聞いた瞬間、涙が出そうになって必死に堪える。
ずっと泣くのを我慢していたのであろう、3、4歳の子供に背負わせるのには重すぎる事実だ。
震える声でそう質問してみると、えずきながら「パパはね…」と話し始めた。
俺が、父親であるとどう説明したら納得してくれるだろうか。
必死に考えている間も、鈴蘭は泣き続ける。
その言葉を聞いて、抱きしめずにはいられなかった。
バカあなたが…っ、
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。