第31話

向き合って分かちあった
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2020/10/20 11:17
『荼毘side』



その子は俺の存在に気付いておらず、そのまま突っ込んできて無事衝突。
「いたた…っ、ご、ごめんなさい…!」

エメラルドの瞳に、ストレートの黒髪。




あなたの髪色は茶色、ホークスは金髪。




どう考えてもこの子の遺伝子は、俺のものだ。
荼毘
気にするな。
「ありがとう、!」俺の言葉を聞いて安心したような顔を見せたが、自分が追われている立場であると思い出し、すぐに逃げようとした。




でも、追いつかれて保護されて、ホークスの手に渡るのも時間の問題だろう。




女の子の襟首をぐっと掴んでおぶると、急いで走り出した。

「おじさんありがとう…助けてくれて」

廃ビルの中に身を隠すと、すぐにまたお礼を言われた。
荼毘
名前は?
この場面だけ切り取ってみると、ただの不審者でしかないが、本当に確認をするだけだ。

「日下鈴蘭」




それを聞いた瞬間、涙が出そうになって必死に堪える。
荼毘
…ママは?
日下鈴蘭
ママは…ママは、死んじゃったぁ…っ
ずっと泣くのを我慢していたのであろう、3、4歳の子供に背負わせるのには重すぎる事実だ。
荼毘
じゃあ、パパは…?
震える声でそう質問してみると、えずきながら「パパはね…」と話し始めた。
日下鈴蘭
パパはね…っ、遠くにいるから、会えないんだってママが言ってた…
荼毘
そうか…
俺が、父親であるとどう説明したら納得してくれるだろうか。



必死に考えている間も、鈴蘭は泣き続ける。
日下鈴蘭
すずは…すずはもう一人ぼっち…?

その言葉を聞いて、抱きしめずにはいられなかった。
荼毘
だから…だから1人にして逝くんじゃねえって言ったのによ…っ
バカあなたが…っ、

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