家に帰ると、そこに荼毘の姿は無かった。
泣いた。ただただ泣いた。
好きだったビールも喉を通らなかった。
テーブルに置いてあった書き置きを見つけた瞬間、すぐにそれに目を通す。
『短い間だったが、楽しかった。
黒霧が迎えに来ちまって、もうここにはいられねえ。
きっともうそこら辺にはいねえと思うから、雨の中探したりすんなよ?
風邪ひいても看病してやれないからな。
あと、酒はほどほどに。
あと、パンツで寝ないこと。
あと、離れていても愛してる。』
夜通し泣いて、気がつけば朝になっていた。
ああ、今日またあの男に会わなきゃならない。
どうしたらいいかなんてまだ何も策は立ってないのに…
涙をぐっと拭って、「私は何もかも耐えてきた強い子」と自分にまた言い聞かせる。
そうよ、何もホークスは結婚してくれなんて望んでるわけではない。
ただヨリを戻してくれるのを願ってるだけなんだから。
適当に戻して、適当なところで別れてやればいい。
今は、この選択肢をとることで傷つけてしまう相手もいないのだから。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。