第32話

分かち合い愛し合い
5,613
2020/10/20 11:23
『荼毘side』


ぎゅっと抱きしめた時、鈴蘭の首に何か金属が下げられていることに気付き、服の中から引き出してみる。


あなたが、大事にしていたペンダントだった。
日下鈴蘭
だ、だめ…っこれ大事だから、取らないで…!
荼毘
大丈夫だ、取りはしない。中、開けて見たことあるか?
日下鈴蘭
これは…本当に辛い時に開けなさいって言われてたから、見たことない…
「けどね、パパとママの写真が入ってるんだって…!」
そうか、あん時の写真、まだ持ってたのかあいつ。



これなら、これなら納得させられる。
荼毘
まだ、開けねえの?
日下鈴蘭
うーん…だってママが…
荼毘
パパが許してやるから、開けてみな
日下鈴蘭
へ…?おじさんが、すずのパパ、?
信じられないといった顔つきで俺の顔を凝視する鈴蘭に、ペンダントを開けるよう促す。

震える手で、そっとペンダントを開けると、満面の笑みを浮かべたあなたと俺がいた。
日下鈴蘭
ほんとだ…っ、ほんとだ…!

すっかりはしゃいで、抱きついてくる娘が愛おしくてたまらない。



でも、ふとあなたのことを思い出したかのように泣き始めた。
日下鈴蘭
なんでママは…死んじゃったの…?ママに会いたいよぅ…っ
荼毘
あいつは、ヒーローに殺された。
日下鈴蘭
ヒーローに…?
荼毘
ああ。だから選べ鈴蘭、ママみたいなヒーローになるか、パパみたいな敵になるか。
「すずは…ヒーロー、許さない。」




そうして怒りに満ちた鈴蘭は、母親の仇を取るべく、ヴィランになる道を選んだのだった。

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