それからは家族で話すことはなくなった。
同じ家にいてもみんな自分の部屋にこもって出てこようとはしない。
最初のころはまだ父親も母親も親らしく振るまっていた。
偽りの笑顔を浮かべてニコニコ話しかけてくる2人を見ているのが気持ち悪くて俺は変わってやろうと思った。
今まで真面目だった俺が髪を染めて、成績が落ちていくのを見て親は俺に興味をもたないようになった。
それから俺と"あいつら"は赤の他人になった。
家の中で会ってもすれ違うだけ。この方が都合が良かったし楽だった。
でも、俺への将来の期待がなくなったぶん姉に期待するようになっていった。
俺が金を稼げなくても姉が稼いでくれればいい。
そんなことを思ってるあいつらに腹を立てた俺は何度も姉に言った。
「何であんな奴らのために努力するんだよ!!もうほっとけばいいだろ!?」
「そうだね……。でもあんな人達でも育ててくれたことには変わりないし、恩は返さなきゃでしょ?」
そんな考えが俺には理解できなかった。
ただ姉がそうしたいと言っているなら俺に止めることは出来なかった。
_____姉と話をした1ヶ月後、事件は起きた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。