がやがやと教室が騒がしくなる昼休み。
クラスメイトたちがお弁当や惣菜を広げる中、私はいつもレモン牛乳のパック一つでお昼を済ます。
美空は三段弁当の白ごはんを頬張りながら、困ったように笑う。
美空の髪は短く切りそろえられていて、スカートの下はジャージだ。
私は窓際の席で伏せっている男子生徒を盗み見る。
長いまつげに通った鼻筋、その先には薄くて整った唇が続く文句なしのイケメンなのだが。
そのとき、上嶋くんの目がぱちりと開いて真っ黒な瞳と目が合った。
じっとこちらを見据える瞳に私は思わずどきりとして目を逸らす。
まるで黒蜜みたいに綺麗で、甘そうな瞳だった。
私のお腹がぐぅっと鳴った。
私はイケメンが好きだ。切れ長の目や整った鼻、薄くて甘そうな唇や風になびくと艶めく髪。
そんなかっこいい男の子に触れたい、手に入れたい。
喰べたい、と思う。
放課後になったら、深くなった夜に私は紛れる。
通りかかった細身で優しそうな顔立ちをしたイケメンを私は路地裏に引き込む。
そしてすぐ裏手の林に素早く連れ込んで――
がぶり
と一口、喉元を噛みちぎる。
鮮血が飛び散って私の体にどろりとした雨が降った。
なのに、どうしてだろう。
お腹がいっぱいになっても、いつも私の胸はどこか虚しかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。