ガッ
そう言って奴は、教室の窓を指差した。
そう言って奴は再びさとみくんを蹴り飛ばした。
もう、見てられないかも。
どれだけ頼って欲しいと強く願っても、ただただ僕に謝ってばかりで、「ごめん」しか言わない。
さとみくんもわかっているのだろう。僕がいじめを仕掛けた意味。
さとみくんがいじめられれば、きっと僕に頼ってくれると思ったから。
さとみくんが悪いんだ。さとみくんが僕の事を好きじゃなかったから。
まだ僕は、さとみくんにとって"友達"だったから。
僕がさとみくんを助けてあげれば、きっとさとみくんは僕のものになる。
なのに、彼は僕になんにも言わない。
何も言わないなら、僕が助けてあげなくっちゃ。
奴が僕を殴ろうとした時、さとみくんが口を開いた。
その時、彼は窓から飛び降りた。
今まで見て見ぬふりをしていた女子達も、その瞬間悲鳴をあげた。
獣たちでさえも、漠然としていた。
もう何もかもどうでも良くなった。
僕は今まで出したことの無いような大声を上げて、学校を飛び出した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!