第2話

Episode 新しい生活
634
2019/12/02 07:11
ー4月■日

その日はとても綺麗な快晴だった。
志桜里
志桜里
はあ、いよいよか。
学園の校門の前で、そう彼女が1人つぶやいた。学園の中には、すでに同級生であろう生徒がたくさんいた。騒がしい者、静かな者、明るい者。
ザワザワした空気の中、彼女は教室に向かって歩き出した。
志桜里
志桜里
さあ、始めよう。私の新しい、高校生活を。
教室には誰もいない。きっとまだ外で騒いでいるのだろう。これからどんな人に出会うのだろうか。期待と不安で胸がいっぱいになる。自分の席に座ってみる。今日からここで、たくさんたくさん勉強するのだ。
志桜里
志桜里
なんだ、まだ誰もいないじゃん。
志桜里
志桜里
(もうちょっとゆっくり来ればよかったな…)
頭の中で、これからのことを思い浮かべる。なんの部活に入ろうか、勉強は難しいだろうか。
…友達は、出来るだろうか。
中学のことが頭をよぎる。辛く、苦しく、悲しい過去…。
志桜里
志桜里
っだぁ〜!もう!過去の事は気にしない!!
机をダンッ!と叩き、教室に響き渡る声を出して叫ぶ。
その時ー
ダダダダ…と足音をたてて、誰かが教室に近づいてくるのがわかった。
志桜里
志桜里
(ん?誰だ…?)
興味本位で扉に近づき、そっと廊下を覗いてみる。顔を出した瞬間、誰かの身体が顔にぶつかりそうになる。
志桜里
志桜里
わっ!!
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
うわっ!
慌てて顔を引き、その拍子に身体が後ろに倒れる。
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
…む?
志桜里
志桜里
痛ったぁ〜…
うっすらと目を開ける。そこには、眼力の強い、黄色と赤の長髪の男が立っていた。
志桜里
志桜里
え…あ、えっと…
迫力のある顔に圧倒され、思わずたじろいてしまう。
志桜里
志桜里
(何この人…怖い…)
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
君、大丈夫か!すまない、まさか人がいるとは思わなくてな…よもや、よもやだ。
志桜里
志桜里
え?あ、だ、大丈夫…です。
志桜里
志桜里
(め、めっちゃ怖かった…てっきり怒鳴られると思った…)
頭の中で、志桜里があれこれ考えていると、スッと手をさしのべられる。
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
…立てるか?
志桜里
志桜里
あ、ありがとう…
志桜里は差し伸べられた手を取り、立ち上がった。
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
君もこのクラスなのか?
志桜里
志桜里
う…うん。
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
そうか!ならこれからよろしくな!
志桜里
志桜里
よ、よろしくね。
男の顔を見る。無邪気に笑うその顔は、窓から漏れる陽の光で輝いているような気がした。
志桜里
志桜里
(な、なんか…気まずっ…)
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
ん?
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
誰か来たようだぞ!
耳をすますと、この男ほどではないが、足音が聞こえる。
志桜里
志桜里
ほんとだ。
「またしのぶちゃんと同じクラスだなんて、私嬉しい!」
「またまた〜、大袈裟ですよ。」
という声が聞こえてるくる。今度は女子のようだ。
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
あら?煉獄さんじゃないですか。
甘露寺蜜璃
甘露寺蜜璃
わぁ〜!師範とも同じクラスなのね!嬉しいわ!
入ってきたのは髪に蝶の髪飾りを付けた女と、桃色の髪の女だった。
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
胡蝶に甘露寺だったか!
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
うむ!俺も嬉しいぞ!
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
あら…貴女のお名前は?
蝶の髪飾りを付けた女が、志桜里の方を向いて話しかけた。
志桜里
志桜里
え、あ、私は鈴燈志桜里…です。
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
鈴燈志桜里…ふふっ、いい名前ですね。
甘露寺蜜璃
甘露寺蜜璃
志に桜に里…素敵なものばっかりね!
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
君、志桜里と言うのか!良い名だな!
志桜里
志桜里
あ、ありがとう。
うっすらと笑みを浮かべる。ぎこちないが、精一杯微笑んだ。
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
私は胡蝶しのぶ。これからよろしくお願いしますね、志桜里さん。
甘露寺蜜璃
甘露寺蜜璃
私は甘露寺蜜璃だよ!これからよろしくね!
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
俺は煉獄杏寿郎だ!よろしく頼む!
それぞれが自己紹介していく。ふと時計を見ると、もうそろそろ皆も上がってくる時間帯に。少し話をした後に、同じクラスであろう生徒が次々に教室に入ってきた。
新河和斗
新河和斗
おはよう煉獄!
野口桃夏
野口桃夏
おはよう〜
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
ああ!おはよう!
煉獄杏寿郎
煉獄杏寿郎
そろそろ入学式が始まるぞ!
新河和斗
新河和斗
うえっ、マジ!?
野口桃夏
野口桃夏
え〜なんかめっちゃ緊張する〜
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
あらあら、大丈夫ですよ。
甘露寺蜜璃
甘露寺蜜璃
そうそう!さ、行こっか!志桜里ちゃん!
志桜里
志桜里
え、あ、うん…!
甘露寺に手を引かれ、志桜里は駆け出した。

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