第2話
Episode 新しい生活
ー4月■日
その日はとても綺麗な快晴だった。
学園の校門の前で、そう彼女が1人つぶやいた。学園の中には、すでに同級生であろう生徒がたくさんいた。騒がしい者、静かな者、明るい者。
ザワザワした空気の中、彼女は教室に向かって歩き出した。
教室には誰もいない。きっとまだ外で騒いでいるのだろう。これからどんな人に出会うのだろうか。期待と不安で胸がいっぱいになる。自分の席に座ってみる。今日からここで、たくさんたくさん勉強するのだ。
頭の中で、これからのことを思い浮かべる。なんの部活に入ろうか、勉強は難しいだろうか。
…友達は、出来るだろうか。
中学のことが頭をよぎる。辛く、苦しく、悲しい過去…。
机をダンッ!と叩き、教室に響き渡る声を出して叫ぶ。
その時ー
ダダダダ…と足音をたてて、誰かが教室に近づいてくるのがわかった。
興味本位で扉に近づき、そっと廊下を覗いてみる。顔を出した瞬間、誰かの身体が顔にぶつかりそうになる。
慌てて顔を引き、その拍子に身体が後ろに倒れる。
うっすらと目を開ける。そこには、眼力の強い、黄色と赤の長髪の男が立っていた。
迫力のある顔に圧倒され、思わずたじろいてしまう。
頭の中で、志桜里があれこれ考えていると、スッと手をさしのべられる。
志桜里は差し伸べられた手を取り、立ち上がった。
男の顔を見る。無邪気に笑うその顔は、窓から漏れる陽の光で輝いているような気がした。
耳をすますと、この男ほどではないが、足音が聞こえる。
「またしのぶちゃんと同じクラスだなんて、私嬉しい!」
「またまた〜、大袈裟ですよ。」
という声が聞こえてるくる。今度は女子のようだ。
入ってきたのは髪に蝶の髪飾りを付けた女と、桃色の髪の女だった。
蝶の髪飾りを付けた女が、志桜里の方を向いて話しかけた。
うっすらと笑みを浮かべる。ぎこちないが、精一杯微笑んだ。
それぞれが自己紹介していく。ふと時計を見ると、もうそろそろ皆も上がってくる時間帯に。少し話をした後に、同じクラスであろう生徒が次々に教室に入ってきた。
甘露寺に手を引かれ、志桜里は駆け出した。
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