テーブル以外には、よく見ても何も無かった。
新品のようにホコリも汚れも無くなっていた。
響が亡くなった後、誰かがこの部屋に入って掃除をした。
それは確定だ。
何故、そんな事をしたのか。
きっと、決定的な何かがあったのだろうな。
この部屋に入れたのは家族しか居ない。
疑いたくないけど、疑ってしまう。
私が部屋から出ようとした時、"未優"と呼び止められた気がした。
同時に私は響に手を握れられているような気がした。
響は私を呼び止めるとき、よく手を握ってくるのだ。
響が居るはずないと分かっているけど、後ろに響の気配を感じた。
思わず、私は振り返ってしまった。
もうここには響は居ないのか。
いくら待ってても、帰ってくることは無い。
その時、響の気配は消えてしまった。
ただ、右手の温もりは消えていなかった。
その時、私の瞳にあるものが映った。
机の下に小さな袋があった。
私はその袋を手に取ると、すぐに中身を確認した。
袋の中身は二つのペンだった。
それと、小さな紙が入っていた。
紙には何か書かれていた。
「未優、最後のプレゼントだ!そのペンは俺とお揃いなんだから大事に使えよ?」と書かれていた。
ペンにはそれぞれ、私のイミシャルと響のイミシャルが刻まれていた。
私はそのペンを抱きしめた。
こんな分かりづらい所に隠したのは、私以外に見つからないようにする為なの?
私だって、見つけられずに部屋を出ようとしたのに。
これが最後のプレゼントなんて嫌だよ…。
もっと、一緒に居たかったよ…。
もっと、もっと……。
その時、目尻が熱くなった。
そして、透明なものが頬を伝って止まらなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。