私は新しい学校へ着くと、始めに職員室へ向かった。
職員室へ行く途中、いじめを受けている人を見た。
けど、私は助けなかった…。
助けられなかった。
その時、私は初めて、いじめを見ているだけで助けなかった人を理解した。
勿論、理解しては駄目だと分かっていた。
職員室に入ると、皆が揃う時間まで職員室で過ごした。
何もしてないとあのことを思い出してしまう。
もうここには響は居ないって分かっているのに、怖くて怯えてしまう。
そう考えていると、時間はあっという間に過ぎていった。
『乙坂さん、行くわよ!』
担任先生が私に声を掛けてきた。
『はい!』
私は元気よく返事をし、先生について行った。
教室までの距離は短く感じた。
教室に入ったとき、目線が私に集まってきた。
目線の怖さが私は心に刻まれていた。
でも、聞こえてくる言葉を聞いて怖さは少し減った。
「転校生かな?」「こんな時期に珍しいー」
悪いことを言っている人はいなかった。
私は教卓の横に立ち、自己紹介をした。
『乙坂未優です!これからよろしくお願いします!』
簡単な自己紹介で済ました。
こんなんで大丈夫かな?
私は不安になった。
『よろしくねー!』
『よろしくー!』
『歓迎会しようよ!』
『それいいね!』
『今日来れる人は××××に行こう!』
私はその会話を聞くと、安心をした。
私は窓際で一番後ろの席になった。
私が座る途端、前の席の人が話しかけてきた。
『よろしくね!えーと、未優ちゃんだよね?私のことはゆりかって呼んでくれる?気軽に話しかけてね!』
優しそうな人だ。
良かった…。
『よろしくお願いします…ゆりかちゃん。私のことは好きに呼んでくれて構わないです!』
『タメ口でいいって!』
ゆりかは少し笑いながら言った。
つられて私も笑ってしまった。
こんな風に笑えたのはいつぶりだろうか?
楽しいな…。
ここに来て、一人目の友達が出来た。
私はたった一人出来たというだけでもとても嬉しかった。
それはもう、顔に出てしまうぐらいだ。
一時間目、二時間目と時間はあっという間に過ぎていき、昼休みの時間になった。
出来た友達は合計で五人だ。
『ありがとう…』
私は静かに呟いた。
五人の友達と食堂へ向かった。
そして売店でお昼ご飯を買い終わり、食べている途中だった。
『ねーね、0時の電話だっけ?最近、ニュースでめっちゃやってるよね?あれって本当なのかな?』
ゆりかが話を切り出した。
その事は思い出したくなかった。
聞きたくなかった。
せっかく忘れていたのに…。
『そういえばさ、未優ってさ××××から転校してきたんだよね?あの学校ってさ、0時の電話の被害がめっちゃあたんでしょ?だから本当なんじゃない?』
『そうだよ…。でも、0時の電話の被害は無い。あれは、それを利用した殺人事件だったんだ。』
私は真実を教えた。
ここで余計なことを言って、友達を失いたくない…!!
が、真実は言っておきたい。
『その事件があったから転校して来たの?』
『違う…。私はただ、お父さんの仕事の都合で引っ越してきた。』
『そうなんだ…』
その時の私の顔は暗くなっていた。
それに気づいたのか、その話に触れてこなくなった。
それから、沈黙が数分続いた。
その沈黙は少し怖かった。
言わない方が良かったか…。
『……っ!時間やばいよ!早く食べないと!』
『ほんとだ!』
『急がなきゃ!』
急に喋り出したから驚いた。
私も時計を見ると、残り時間がわずかしかなかった。
私も急いで食べ始めた。
そして、私は二番目に食べ終わり、皆食べ終わるのを待った。
数分して三人も食べ終わり、五人で教室へ戻った。
教室に着いた時はぎりぎりの時間だった。
それぞれ自席に戻り、喋る暇無く授業が始まった。
私の居た学校からとても遠い学校でも、私の居た学校が被害にあった話は伝わっていたのか…。
でも、さっきの様子だとその話は私の前ではもうしなそうだ。
例え、されたとしても動揺しては駄目だ。
あまり知らないふりをすればいい。
そうだ!
そうしよう。
もう間違った選択はしない…!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!