……あれ?
七時四十五分……?
『昨日の夜はどうやって家に帰ってきたっけ?』
記憶が無い……。
『未優ー!学校行くの?』
お母さんが部屋に入ってきた。
『行く!お母さん、私って昨日の夜何してた?』
あれは夢なのか?
『いつもより早く寝ていたわよ』
『そうだった!』
何だ、夢か……。
私はそう知ると、安心した。
私はすぐに制服に着替え、下へ降りた。
『ごめん、今日も早く行くから』
そう言い、家を出た。
今日はいないか…。
何か胸騒ぎがするな…。
何でだろうと思うながら、私は学校へ向かった。
久しぶりだ……。
学校へ着いたのは、一時間目が始まった頃だった。
『すいません、遅れました』
教室の扉を開け、私は言った。
『もう大丈夫なの?』
担任の先生は心配しているようだ。
『もう大丈夫です。』
私はそう言い、自分の席に座った。
『もう体調大丈夫?』
ゆりかは後ろを向き話し掛けてきた。
体調が悪いってことにしてくれたんだ。
『うん!もう平気!』
私は微笑みながら言った。
『良かったー!お見舞い行こうと思ったんだけどさ、先生がどこに家があるか教えてくれなかったの。ほんとごめんね!』
『大丈夫だよー!』
お見舞いに来てたら、面倒な事になるとこだった。
五分ほど経った時、着信音が鳴り響いた。
『先生、ちょっと出てきていいですか?』
『すぐに済ませなさいね!』
許可を貰い、私は教室を出た。
『お母さん?どうしたの?』
お母さんからの電話だ。
『授業中だったよね…でも、最後に言っときたくて…ごめんね、最後まで見守っていられなくて……さよなら……』
その声はとても苦しそうだった。
『私の事は言ってないだろうね!』
この声は……!!
『先生!すいません!大切な用事が!』
私は担任にそう伝えると、前だけを見て走った。
お願い!間に合って!
心の中で強く願った。
あの声は……
響のお母さんの声だ……!
『お母さん!』
家に着くと、勢いよく扉を開けてリビングへ向かった。
『お母さん……?』
私の目の先には血塗れのお母さんが倒れていた。
私はすぐに駆け寄った。
『お母さん!何があったの!?』
私が声をかけた瞬間、お母さんの指がピクッと少し動いた。
『帰って、きた、のね……ごめん、ね』
その言葉の後でお母さんは全く動かなくなってしまった。
『いやだ!お母さん!置いてかないで……!』
未優の目からは透明なものがポタポタ落ちてきていた。
今日学校に行かない方がよかった……。
今日は最悪の日だ……。
その時、未優の背後に響のお母さんが近づいてきていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!