『もうやだ……。誰も失いたくない……』
未優はゆっくりと立ち上がり、後ろを振り向いた。
『全てお前のせいでこんな事になってるんだ……!』
未優の目線の先には、響のお母さんが立っていた。
『どうしたの?未優ちゃん』
『説明しなくても、分かってるだろ!もう演技はいいよ……いい加減本性見せろよ!』
未優にはなんの言葉も届かなかった。
『本性?そんなの無いわよ!』
響のお母さんは微笑みながら言った。
『さっさと見せろよ!演技するなって言ってんだ!』
何笑ってんだよ…ふざけんな!
『分かった。』
響のお母さんはあるカードを見せてきた。
『あーあ、お前もAPEPだったのかよ……少しは信じてたのに……』
未優は台所に行き、包丁を持った。
『……もう信じない!お前なんかいらない!』
そう言い、未優は響のお母さんの方へと走った。
あぁ、あっという間だ。
『もう大丈夫だよ、お母さん』
壁にはたくさんの血が飛び散っていた。
一つは心臓、二つ目は右足、三つ目は左目にと三つの包丁が響のお母さんには刺さっていた。
その時だ……!
着信音が鳴り響いた。
私はすぐに出た。
『もしもし、奏だよ。君の周りにいる人は不幸になる。伝えるの忘れたね。でも、今ので分かったでしょ?それとごめんね、もう助けることは出来ないよ。君は人を二人殺した。一人は昨日の夜に、もう一人は今。君は今日、死ぬよ。響と一緒に君を殺しに行く。逃げないで待っててね』
そして、電話は切れた。
あー、私死ぬんだ。
いや、まだ死ねないや。
殺しに来るんなら、逆に殺せばいいか。
もう誰も信じない……。
響と奏が本物だとしても、もう知らない。
これからは響の為じゃない。
これからは自分の為にやるんだ!
『あー、本当に今日は最悪な日だな……』
未優はそう呟くと、片付けを始めた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。