第19話

本性
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2018/08/18 11:56
「来たよ、アイツ」「また奏といるし」「アイツなんかほっとけばいいのにー」「誰かがそばにいないとダメなんじゃない?」「何それ、うざっ!」








教室に入った途端、冷たい目線、声。







わざとだ。






けど、私は耐えた。



















でも、全部を耐えることなんて出来なかった。







私は下を向いた。










泣きそうな目を誰にも見られたくない。








私が弱いやつだと知られたくないから。











強くなりたいと思って、なろうとしたことはあったさ!








けど、無理だった。







実感したから分かった。








私は下を向きながら席の方へ行った。












奏は席まで一緒についてきてくれた。








そして、席に座った時だった……!


















椅子に違和感を感じた。








椅子にはベトベトなものが付いていたからだ。







最初はのりと思った。






でも、違かった。










何なのか謎だ。














その時、まだ私の近くにいた奏がそれに気づき何か言おうとした。








けど、私は立ち上がり、奏の口を抑えた。








『大丈夫。このぐらい平気だよ、だから何もしなくていいよ』











私はそう言ってもう一度、席に座った。











その時、私は気づいた。










透明なものが頬を伝っていることに。









何で出てくるのか分からない。








ただ、止めることは出来なかった……。

















『未優……。俺、』












その言った後の奏は何かを決心したような顔つきになった。










『俺のせいでごめん。楽にできるか分からないけどさ、多分大丈夫だ。後は任せてくれ。』









奏は私の方を見てそう言った。







『何をするつもりなの?危険な事はしないでよ!そんなことするなら、私はこのままの方がマシだからね!分かった?』











嫌な予感がする。











『あー、そんなことしない。大丈夫だ!』




奏はそう言って自分の席の方へと行った。











その時の奏はニヤリと笑っていた。











それを私は見ていなかった。














だが、それを見たところで、奏が嘘をついているかどうか、私には気づくことが出来ない。















だって、奏は嘘が上手いから。










そして、時間は過ぎていき、長い一日が終わって放課後になった。










今日は、先に帰っていろよ、絶対だぞ!と奏に言われた。











今日の奏は様子がおかしかった。











心配だ。








何をするつもりなのか分からない。











分からないと止めること自体出来ない。







なら、何をするかどうか確かめればいい。






そう思い、私は奏を探し始めた。














このまま、奏を置いて帰ることは出来ない。








私は校舎を走って探し始めた。







~その頃の奏~










『ねぇ、俺の未優に手を出すってことはさ、覚悟してるからだよね?てか、いじめるなら、俺にしろよ!いじめをやめなかったら、本当にどうなっても知らないからな?俺、未優の為なら人を殺すことだって出来るから。先に言っとくけど、今さら謝るなよ?てか、何その顔。こっちの俺の姿見て驚いた?だよな?未優も知らないもんな。あんたらだけに教えてやるよ。俺さぁ、もう人を殺したことあるんだ。誰にも言うなよ?後でまた会うことになるからな!楽しみにしてろよ?』











俺(奏)は、今までで一番怖い顔をしていた。










未優が俺としかあまり居ないのには理由がある。








現在、美優と暮らしているのは義理母、義理父である。










未優の本当の家族はある事件で死んだ。











連続強盗事件。








未優の家も被害にあった。












未優だけは外に逃げることが出来て何とか助かった。












だが、警察が駆けつけた時にはもう、母親も父親も兄も皆死んでしまっていた。







犯人はもう居なかった。











そして、未優は母親の姉に引き取られた。









それからも何件もの家が被害にあった。











そして、未優の家の被害から、犯人は五日後に見つかった。









首を吊った状態で。












自殺とされているが、俺が殺した。












殺したのには理由がある。










未優は危険に陥った。








未優は精神的ショックで目を閉じた。







医者は、悪いことを言いますが目を覚まさないかもしれません、と言っていた。








そして、俺は毎日、未優に話しかけた。









そのおかげかは分からないが、犯人が死んでから三日後に未優は目を覚ました。










だが、事件の記憶を失っていた。









いや、事件の記憶だけじゃない。









本当の家族のことも忘れてしまっていた。












だから、血の繋がってない今の義理母と義理父を本当の家族だと思っている。













俺は義理母さんから頼まれた。














『未優を守って欲しいと。記憶が戻ってこないようにして欲しい。思い出した方がいいかもしれないけど、辛い思いをさせたくないの。またあんなことを繰り返したくないから。お願い……』









それはもう、必死に必死に頼まれた。






だから、俺は未優を守る。



それに、頼まれる前から守るつもりだ。







それと、もう一つ理由がある。








未優が好きだからだ。











未優は鈍感で気づいてないけど。










好きとは恋愛的な方でだ。









勘違いされないようにここで秘密をばらそう。







これは俺がこうなるまでの物語。








俺は双子だった。








兄と妹という構成だ。










俺は兄の方だ。





妹は奏(かなで)。俺は響(ひびき)だ。






未優は俺を妹の方だと思っている。










奏(妹)は死んだ。











俺が殺した。












邪魔だった。




羨ましかった。











憎かった。










でも、死んだのは響だとされている。









響は自殺として記録に残っている。















この事を知っているのは俺だけだ。











人を殺すのはだめだ。





分かっている。








だが、罪悪感なんて無い。






悲しくもならなかった。










嬉しかった……!










邪魔者が消えてくれて。























未優の前では演技をしている。












未優のそばに居られるなら、ずっとこのままでもいい。







そうして、今まで幸せだったのに……。
























なのに、また、邪魔者が現れた。









まぁ、邪魔者を少しづつ消していけばいいだけの話か。










そして、俺が前を見ると、まだいじめっ子達がいた。






















だから、俺は睨んだ。









すると、謝ってきた。






『ご、ごめんなさい!』と。










そして、いじめっ子達は去って行った。








その後、俺は未優を見つけた。











俺はすぐに隠れた。









今、会うのは無理だ。





~その頃の未優~







私は奏を見つけることが出来ず、諦めて帰った。








その後は何事も無かった。

















そして、翌日になった。







いつも通りの奏に戻っていた。





昨日は少し具合が悪かったのかもしれない。






そう思った。











今日も学校に着くのが早く感じた。









でも、奏が色々話しかけてくれたおかげで少しは怖さが減った。










教室に入り、私は驚いた。









机も椅子もロッカーも全部綺麗になっていた。












何でかわけが分からなかった。












いじめっ子達は奏が来ると怯えていた。













何があったんだ?















今日、先生の口から残酷なことが出てきた。










『〇〇さんと〇〇さんと〇〇さんと〇〇さんが亡くなりました。自殺だそうです。』














いじめの中心だった人たちだ。













何で自殺なんかしたんだろう。













私が謎めいた顔でいると、奏が耳元で言ってきた。














『邪魔な奴らから消していこうな。』











そう言ってニヤリと笑った。









この声、やっぱりあの声と同じだ。











勘違いかもしれないけど。










本当なら、どうすればいい?












分からない。











そもそも、奏ってこんなに背が高かったけ?












こんなに声が低かったっけ?













奏には兄がいたような。









名前までは分からない。









思い出せない。







私は頭が混乱した。











そして、私は倒れてしまった。

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