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平安と現代の待遇関係
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教頭の声で卒業生全員が起立する。
すごくすごく長かったはずの3年間。
嫌なことも悲しいことも辛いことも沢山あった、辞めたいって思う事も一度や二度なんかじゃなかった。
だけど今、こうやって卒業式を終えてふと3年間を振り返ってみると嫌なことも辛いことも含めてあたし自身を成長させてくれるものだった。
とてつもなく長く感じていた日々が今となっては何故か短く感じる。
去年まで長く感じていた卒業式だって一瞬のことに感じた。
こんな卒業証書なんていう紙切れ1枚であたしたちの3年間の日々は語りきれない。
そう思えるのだって兼平くんがいたから、兼平くんが大事なことを教えてくれた────
教室へ戻り最後のHRを終え、解散が告げられたのに誰も教室から出かない。
あれ、教室ってこんなに狭かったっけ。
当たり前だった環境を改めて見ると何だか違う景色に見える。
色羽がスマホを片手に駆け寄ってくる。
昨日のことなんて何も無かったかのようにいつも通りに。
この3年間で色羽にはどれだけ迷惑をかけただろうか。
どれだけ傷つけてしまっただろうか。
それでもこんなあたしと仲良くしてくれた色羽にはほんとに頭が上がんない。
だから、
一言だけこうやって告げてみた。
不思議がる色羽を無視してあたしはレンズに向けVサイン。
恥ずかしいから面と向かってありがとうなんて言えないけど、言葉にしなきゃ伝わらない。
後からあの時言っとけばよかったーなんて言って後悔しても遅いんだから。
思い立ったらその時に〜だよ。
いきなりのあたしの言葉に驚く色羽を横目にカバンを持ってダッシュで教室から走り去る。
あーーーー!恥ずかしかった……でもちゃんと言いたいことは言えた。あたしのホントの思い。
きっと色羽なら荒波に揉まれても強く芸能界で生きていける!あたしが太鼓判押すんだから!
あっやべ……母ちゃん置いてきちゃった。
まっ、どうせ他の親と長話してるだろうしいっか。
三年間毎日通り続けた琵琶湖の畔の通学道を感慨に浸りつつゆっくりと歩く。
ここでたくさんのものに出会った。
友達・綺麗な景色・空……そして大好きな人。
もう制服でここを通学することがないと思うと少し寂しい。
だけど、兼平くんが教えてくれた、終わりなんかない常に人は走り続けている途中だって。
だからあたしもまだまだ走り続ける。明日も明後日も来年もずっと。
あーあ、昨日までのあたしだったらきっとこんなポジティブな考えなんてできなかったんだろうな。
ぜーんぶぜんぶ兼平くんのおかげ。
恋なんていう厄介なものが教えてくれたこと。
兼平くん言ったじゃん……。
『あなたと、あなたと共に生きていく者の健やかな未来を心より願っている。』
って。
あたしと共に生きていくものってあたしがこれから愛することになる人ってことでしょう?
無理だよ……だって、兼平くんが好きって思いちっとも消えてくれないもん。
兼平くんのこと嫌いになれないんだもん。
兼平くんの馬鹿……。
今にも涙が溢れてしまいそうで青々とした空を見上げると大きな大きな積乱雲が浮かんでいる。
一雨くるかな。
そう思った時だった。
背後から呼ばれる。
その声は確かに、聞き間違えるはずのない大好きな大好きな声だった────