第9話

▶︎ 今だけ伝われ ー 2:05
1,451
2020/09/28 09:50






《 転校生を紹介する 》








朝のHR 。




先生が突然言い放った。






《 日本人の転校生で、
まだ韓国語が完璧じゃないそうだ。
簡単な単語で、わかりやすく話してやれ。》








日本人。




留学生とかじゃなくて
普通の転校。




親の仕事とかかな。






ガララッ






扉が開いて、そこから見えた顔は
思っていたよりも端正な顔立ちをしていた。






身長は推測だけど160くらいだと思う。







まぁ、女子だし
きっと俺は関わることないな。




なんて思っていた。





「 あなたです。よろしくお願いします 」






カタコトな韓国語で自己紹介をした彼女。






俺の隣の席、空いてるけど先生まさか....





《 パクチソン、
この子隣だから色々教えてやれよ。
チソン、手上げろ 》






そう言われ俺は大人しく手を上げる。





《 あいつ、パクチソンの隣な。 》





先生はいつどこで習ったのかも分からない
流暢な日本語で彼女に話しかける。




「 は、はい 」




返事をして俺の隣の席に来る。







話しかけた方がいいのかな。







そう考えている間に
先生が話し始めてしまった。










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🐬「 チソンチソン!転校生だね! 」






そう俺に話しかけてくるチョンロ。





チョンロも去年こっちにやってきた
中国からの転校生だ。





『 うん、』





🐬「 おれと同じだから、チソン、仲良くしようね! 」



『 うん....... 』






それとこれとは違うんだよ、チョンロ。





相手は女の子で俺は男なの!







仲良くできる気がしないよ.......






🐬「 ちそん?? 」







耳にバシバシと伝わるチョンロの声を
聞き流しながら


俺は何も書いてない黒板を見つめた。










キーンコーンカーンコーン.......








チャイムがなり、授業が終わる。






この子、聞き取れたのかな。






その子の様子を右を向いて確認する。





するときょろきょろと
何かを探しているようだった。






話、かけた方がいい...かな








『 あ、あの....... 』



🐬「 ちそん! 」




邪魔された.......!




『 もー!チョンロや!
今俺この子に話しかけようと.......! 』




🐬「 え?あ、そうだったの?
ごめん~! 」




『 や、別にいいけど....... 』







俺らがそんな話をしているとうるさかったのか
あの子がこっちを見ていた。






『 あ、あの!
何か、探してますか? 』







どのレベルまでの知識があるのかとか
全然わかんないからとりあえず話しかける。





ゆっくり、なるべくわかりやすい単語で







それでも彼女は首を傾げて
申し訳なさそうな顔をしていた。







『 どうしよう....... 』



🐬「 チソン、通訳機! 」



『 あ、それだ!チョンロ天才 』






チョンロの助けで
俺は携帯で通訳をして彼女に話しかけることにした。







『 なにか探してますか? 』





そう俺が携帯に話しかけると
日本語だと思われる言葉が携帯から放たれていく。







[ 何かを探していますか? ]







その言葉を聞いた時、
彼女は弾けるような笑顔を見せてから
携帯を取りだした。





そうして携帯に話しかけてから、
韓国語に翻訳された言葉が携帯から流れてくる。






[ はい、探しています。
トイレはどこにありますか? ]






あぁ、トイレか。






俺はすくっと立ち上がって
彼女に手招きをした。








チョンロ、置いてくけどいいよね。









「 ありがとうございます 」





カタコトな韓国語でお礼を放つ彼女。






『 あ、うん....... 』





俺は返事することしか出来ない。






咄嗟の行動過ぎて、
自分でも把握不可能.......








なんでこんなことしたんだ?







でもクラスメイトで隣の席どうし。






仲良くしないと。





🐭 [ 大変でしたね ]

[ はい。ありがとうございます ]


🐭 [ 気軽に話しかけ、
私と仲良くしてください。 ]

[ よいのですか。
お言葉に甘え、仲良くさせていただきます。 ]







しばらく堅苦しい翻訳を通しての会話が始まる。






トイレに案内して、
教室への帰り道も翻訳を通しての会話。






なんか、なんだこれ。









でも僕は気づいたら、咄嗟にこういっていた。







🐭 [ 僕が韓国語を教えます。
なので仲良くするため、
一緒に帰りましょう。 ]






日頃から、女の子自体と関わりのない俺が
こんなことを言うなんて、らしく無さすぎて
自分自身がすごく驚いている。






どうしちゃったかな。






でも、きっと後悔しないだろう







[ はい、喜んで ]





彼女がそう答えてくれたから。





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はぁ、困ったなぁ…








まさかこんな事態になるだなんて思ってなかったよ。







🐬「 チソン?顔死んでる 」



チョンロが俺の目の前で手をヒラヒラとさせる。





🐬「 え、なんなの??どうしたの?? 」



『 ちょんろや、ちょっと 』






俺がチョンロの制服の裾を掴んで
教室の端っこまで連れていく。





🐬「 なになに 」



『 あのさ、… 』








『 俺、あなたのこと好きになったかも 』




🐬「 え 」






俺とあなたが仲良くなって数ヶ月がたった。



まだ不慣れで、
本当に簡単な韓国語しか分かってなくて、
今のチョンロになんか
まだまだ満たないほどのレベル。





今でも翻訳機が手放せない。





でもそんな中でも
確実にあなたへの気持ちが
大きくなっていくのがわかった。







久しぶりに恋なんてしたから、
全然どうしたらいいかわかんないし、


愛の言葉なんて、あなたに伝わるはずがない。




だからって今教え込むのも少し恥ずかしい。





よ、幼稚園以来…?

恋とか…はぁ、……





🐬「 え… 」



『 そんなにえ、ばかり言わないでよ… 』





🐬「 だってびっくりしたんだもん。急にそんなこと言うから! 」



『 ごめん、… 』



🐬「 なんか全然そんな感じしなかった… 」



『 うん、… 』





なんか気まずいよ…




チョンロに話しただけで気まずいのに
あなたに告白なんて以ての外だよね…








🐬「 なんか気まずくしてごめん!
俺ちそんのこと応援する!
なんかできることあったら言ってね!! 」







元気なチョンロに俺は背中を押され、
勇気が出ている早いうちに、
言ってしまおう、って謎に決心が着いた。








『 よし、俺頑張る 』





🐬「 え、もう?え、いつ?! 」





『 なるはやで! 』




🐬「 …なるはや?? 」







俺はチョンロの手を引いて元の席まで戻った。







あー、今から心臓がバクバクしてるよ。








できるかもわかんない告白を、
今、ここで決めて
帰りしよう、だなんて呑気に考えているんだから。




俺って、
そんな行動するタイプじゃなかったんだけどな。









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そして、待ちに待った(?)帰り。










「 ち、ちそん!かじゃ…! 」





『 あ、うん! 』






チョンロにまたね、って言って
2人で校舎を出る。







『 少しは慣れた? 』





「 えっと 、… はい ! 」





『 敬語… 』







まぁ、…仕方ないよね 。








それにしても…やっぱり可愛らしいよな…








カタコトの韓国語とか…特に…







あああっ、恥ずかしくなってきた…











帰り道
俺はいつも以上にぎこちなかったと思う。





そんな俺にあなたは何となく
不安げ、というか…心配…そうな顔をしてくれてた。





俺の事ちゃんと見てくれてたんだ、なんて
また浮かれてしまった。








「 ち 、そん 」





『 あっ 、なに ? 』






できるだけ 、何を話すにも優しく。





チョンロにそうしてあげたように。








「 ありがとう 、 」




『 あなた … うん 、どういたしまして 』








俺がそう言うとニコって笑うから
俺も釣られて笑う。






ああ 、やっぱり…







『 好き 、… 』






「 ? ちそん 、なんて … ? 」








ポロッと呆気なくでてきた好きは
あなたがまだ理解していない言葉だった。







伝わって欲しいけど 、
伝わって欲しくない 。






今更複雑な気持ちだけど 、
やっぱり自分の気持ちに嘘はつきたくないから …







『 あなた 、사랑해요 、』




「 … 」




目をぱちぱちさせて
分からないと言わんばかりの顔をするあなた。







それでもいいや 、
いずれ分かるもんね … ?








俺は言ったという実感は湧かずとも
恥ずかしいものは恥ずかしかったらしく

今すぐその場を離れたくって




『 じゃ 、じゃあね ! 』





なんて言って後ろを向いて走り出した 。








その間 、










あなたが顔を真っ赤にしてたなんて 、
分かるはずもない 。














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