第11話

▶︎ いつだって ー 14:19
1,710
2020/08/11 04:25
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






いつだって君の目線はアイツに一直線だった____ 。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー










うんざりするほど昔から変わらない。




好きな人なんて
コロコロ変わるもんだと思ってたのに。






あいつの目の先にはいつも同じ人。





そういう俺の目の先にも同じ人。




人の事なんて、昔から言えやしなかった。










____ 6月6日。







俺は初めてそいつに出会った。




それは小学生のときだった。




衝撃的だった。




目が合って、不意に微笑まれた。




恋なんてくだらねー、って思ってた
俺がまだガキの 小5 だったその日。




心変わりなんて一瞬で、
恋に落ちんのも一瞬だった。






目が合って微笑まれたのが
恋に落ちたきっかけだなんて、
どこぞの少女漫画だって思うけど

残念ながら落ちた理由、それだけじゃないんだわ。








「 ヘチャンくん、
今日お誕生日だったよね?おめでとう! 」






クラス替えした初日。



その日にチョロっと言っただけの誕生日。




だーれも覚えてくれやしなかったのに、
お前だけが、ハッキリ、鮮明に
俺の誕生日を記憶して、今目の前で祝ったんだ。





このせいでも、ある。






俺の誕生日祝ってくれるやつなんて
残念なことに片手で数えられる程度だったから、

嬉しくて仕方がなかった。





『 覚えてて、くれたんだ…。
うん、ありがとう 』




俺はその日、
柄にもなく繕ったと思う。



割と
かっこよくて、
いい姿の自分を、



君の瞳に写すために。










____ 6月6日。








期待で溢れた 小6 のあの日と同じ日。





君はまた、俺と目を合わせて、




「 ヘチャン、お誕生日おめでと! 」




去年よりも砕けた口調でそういった。





胸の高鳴りなんて、
あの日よりも遥かにデカい。






俺はこの幸せが限りなく続くと思ってた。






バカだったみたい。



そんなことあるわけなんてないのにな。









____ 7月1日。








面白くないことが起きた。






転校生だとよ。






同じく 小6 の夏休み前、
ビビるほどに顔面が整ったやつが
転校してきて、君の隣に座ったんだ。




それは仕方ないよ。




君の隣の席しか空いていなかったのだから。





それでもまぁ憎かった。



せっかく、色んな人にお願いして
君のとなりに俺が座ったっていうのに。






お前は俺より簡単に座りやがった。







そいつと君は
なぜだか瞬く間に仲良くなっていった。




それが憎くてしょーがなかった。





2人が仲良くなって、
今の君と俺の距離よりも
そいつと君の距離が近くなるのが心底嫌だった。





だから俺はそれを阻止するように
そいつと仲良くなった。





それが原因だったんだ。








____ 8月13日。







3人でよく集まるようになって、
当たり前かのように
夏休みも3人で遊ぶことになった。





こんなに集まる回数増えんなら、
沢山君と、うんざりするほどに話せばよかったって
後悔してる。




まぁ今更だけど。







俺と君の家が近いから、
俺はそいつの元へと君と向かった。




幸せだった。




その時間だけは少なくとも
君の頭ん中、目ん中、俺しかいないから。





でも目的地に着いちゃえば
俺だけじゃなくなる。





すっげー嫌だったけど、
俺は別にそいつのことが

めっっっっっっっちゃ嫌い!!!

って、ワケじゃなかったから
どうしても表に出したりとか
言ったりだなんてことは出来なかった。






「 ジェミンくん、おめでと! 」




今日は俺が嫌いなそいつの誕生日。





『 ん、おめでと 』





俺も、成り行きで祝うしか無かった。






今日約束したのは偶然なんかじゃない。



君が用意した必然だ。






俺はそんなこと知らなかった。


約束をしたあと、君に呼び出されて
少しの期待を胸におバカな俺は君んとこへ行った。




そしたらまーまー、悲惨なことでさ。





ジェミンくんのために力を貸して、だの
聞きたくもねー言葉聞かされて、


でも俺はまだ可愛かったから、
好きな人の頼みなんて断れなかった。





快く引き受けた俺は、
今仕方がなくそいつの前にいる。





仕方がなく、ね。








____ 3月23日。








時が過ぎてくのって
馬鹿みたいに早くて、



俺も、君もそいつも、




みんな、卒業する、っていう時期がやってきた。








意外と根性無しで臆病者だったらしい俺は
君に告白することなく時間が過ぎってった。







言ってやりたい。


その頃の俺に



バカヤロー!!ってな。











____ 4月23日。








そして俺らが卒業して、


また1年を経験する季節がやってきた。





入学の時期だ。






義務教育ってやつは
長ったらしくて、うんざりする。





そいつと笑ってる君をもう見たくない


なんて願いすら叶わないんだから。





クラスが増えた。




小学生の頃よりも大幅に。






こりゃチャンスだ、って思った。






結果は俺と君が一緒。


そいつだけが別だった。






最初は喜んだよ。


でもこれがあとで嫌になるんだ。







だって考えてよ。




邪魔者なしに俺と君2人だけ。






俺がどんどん君に大ハマりしてくだけじゃん?





それはそれは手に負えなくなるくらいにね。







結論からいえば、もっともっと、
好きになってったってこと。






こりゃ大変だ。









____ 6月6日。








「 ヘチャン、おめでとっ 」






君は何を考えたのか、



帰り道
俺に思いっきり抱きついてきた。





そいつも何考えたのか、



君と一緒に抱きついてきた。






🐨「 ヘチャナ~♡ ん〜、ん~♡ 」






そいつは思ってたより変人で
とんでもないくらい気色悪かった。






ポッポせがんでくるし…






「 ふふっ、今年もヘチャンの誕生日祝えてよかったな~! 」


🐨「 えー、あなたずるい…俺初めてなんだけど?? 」









何がずりぃだよ。




俺はおめーの手がさり気なぁく
あなたに触れてる方がずりぃわ。





俺は正直者だったっぽくて、
表情筋ゆるゆるにしながら
君とそいつを思い切り抱きしめ返した。







『 ばか 』









____ 8月13日。









もうそれはきっと恒例になりつつある。




時が過ぎて 中3 になった俺らは
またそいつの誕生日を祝ってた。






結果うじうじして、
俺がなんにも言わない状態だったから



俺が君に「すき」っていう前に
気づいちゃったんだ。





そいつに話しかけられる度に
声色変えちゃって。




バレバレなんだってば。




俺と話してる時より顔は赤くて明るいし、

俺と話してる時より楽しそーだし、

俺と話してる時より嬉しそーなんだもん。






全部俺と比較すれば分かっちゃうくらい
目に見えてた。




君、好きなんでしょ、そいつのこと。







『 あーあー!なんでかなー!! 』





家に帰って鬱憤を壁に叫んでも
聞こえるのは妹の怒鳴り声だけ。






寂しくって、悲しくって、
俺は泣いた。








____ 1月25日。







高校だってお前らが追いつけないほど
いいとこ行ってやろ、って

本気出して頑張ったのに。






なんでお前らはそんなにいい頭持って
俺について歩くんだよ。






なんにも酷いことしてないのに
なんだか悪いことが俺にだけ回ってきてる気がした。





はー、最悪。








もっと最悪な事態がこの後起こるなんて
この時の俺は知りもせず

呑気にイヤイヤ、って言ってた。









____ 6月6日。








今年もこの季節が来た。




高校に上がっても
まだ祝ってくれんのかな、なんて


俺は考えてた。






でもそんなんもうなかった。






「 あ、あのね、ヘチャン 」





この言い出しから
俺は最高に嫌な予感がしてたんだ。




だから本当は

「あー、ごめん用事思い出した」

なんて言って逃げたかった。




でもやっぱ好きな人に声かけられたわけだし、

って本能が勝手に足止めしたんだよ。







そんな意地悪い本能に
俺は少し唇をかみ締めた。





いなくなっちゃえ、
君のこと好きなんか俺なんて。






「 私、ジェミンくんに告白しようと思うの。」






『 そっか、頑張れよ! 』






笑うしかねぇだろ、こんなん。





君のためにも、

情けない俺にも。






最っ高の誕生日プレゼントだよな、
ほんと、よくやってくれるわ。









____ 6月14日。







君の行動力って
ほんと尊敬するくらい凄くてさ。







「 ヘチャン、あのね! 」






とびきり可愛い笑顔で君は俺にこう告げた。






「 ジェミンくん、告白OKしてくれたの! 」






そっかそっか。






『 やったじゃんか! 』






信じられないほど俺は普通だった。



心のどこかでは
こうなることわかってたんだと思う。






『 幸せにな! 』







こんなことよくつらつらと言えるよ。





絶対俺はジェミンより君のこと好きなのに。









次の日からは憂鬱で仕方なくて
俺は母さんに土下座して1週間休み貰った。





学校から帰ってきた妹にも頭下げて
習ったとこ全部教えてもらった。







どんだけ俺が無茶言っても

母さんも妹も笑って許してくれんだよ。






いつもならそんなことしてくれないのに
馬鹿みたいに優しい家族に

俺は変に温かさ感じて
泣きそうになった。





1週間が終わって
朝、登校準備してる時にふと思った。





失恋して1週間休むなんてだっっっっっさ。



って。







それにそれくらいで休むなんて
まじ俺有り得ねーって思ったよな。






反省しながら俺は学校に向かった。






🐨「 ヘチャン!大丈夫?! 」





なんで朝1番目に会うのがコイツなの。






『 んー?別に大丈夫だけど?』



🐨「 へ?だって高熱出したってあなたが、」




『 何言ってんだよお前、こんなんずる休みだわ笑 』






馬鹿なこといって俺はその場を去った。








____ 8月13日。







いつもなら行くそいつの誕生日の遊び。




今年はお休みした。





ふざけながら2人から連絡来たけど、



お生憎様俺には
カップルの間に入る勇気なんざないんだわ。





残念でした。








その日の夜そいつから電話がかかってきて
近くで会えないかなんて無茶振りまでしてきた。




仕方がないから優しい俺はOKしてやったよ。







『 なーに。』


🐨「 ごめん 」


『 なにがだよ 』


🐨「 あなたの、こと… 」



『 は?何を思って謝ってんの? 』



🐨「 … 」




『 別にいーから笑
なんともないし、休んだり
お前の誕生日行かなかったのとか
それと全く関係ないから笑』



🐨「 そう、なの…? 」



『 まー、確かに好きだったけど、
お前から横取りするほどの根性なんて
俺にはないんだよ。
好きに笑ってやってくれ。』



🐨「 ヘチャナ、」



『 まぁ傷つけたら許さねーけどな。』






早く去りたかった。



そいつの口から君の名前聞くのが嫌だった。





今そいつの姿見るのも嫌だった。





そいつが俺に君の彼氏面見せに来てるとか
君の彼氏アピールしてるとか、




よくわかんないほど悪いこと考えちゃうから。





だから俺はぱっぱと言いたいこといって
その場を去った。



まぁ正確に言えば、逃げた。







情けないね。

でも仕方ないや。









____ 8月2日。















🍉「 あともう少しで夏祭りだな。」




『 ん、そーですね。』




🍉「 いいのかよ。1回もなんもしなくて。」




『 マクヒョンのお人好し。
別にそんなことしなくなっていーし。』







だってそんな悪あがきしたってもう無駄だもん。









『 あ、言ってなかったか。そーいえば 』



🍉「 何を? 」



『 あそこ、くっついたんですよ。あなたとジェミン。』




🍉「 …は? 」





触っていたノートパソコンを机に置いて
床に仰向けに寝っ転がる俺の顔の
目の前に来たマクヒョン。






🍉「 それでほんとにお前は良かったのかよ。」



『 それで良かったもどーも、気づいたら出来てたんですもん。』



🍉「 はぁ、…嘘だ。」



『 ……なんですか、なんか文句でも…? 』



🍉「 …泣くなよ、俺まで辛くなって来ただろ、…っ 」





『 もう、まじでお人好し…っ、』







ヴーヴー…





🍉「 けいたい…、なってる…っ 」


『 わかってます、… 』




少し震える手で携帯をとる。




『 はい… 』




🦊「 おい!今ジェノたちと祭り来てんだけどさ、あなたいたぞ! 」



『 んだよ、…それだけか…っ 』




🦊「 …はぁ?泣いてんのかよ、お前 」




『 俺は行かないからな… 』




🦊「 なんでだよ 」



『 だってあなたはジェミンと、』



🦊「 は?ジェミン?…ジェミンなんか隣にいなかったけど 」




『 …は、』





俺は携帯を置いて上着も着ないで外に走り出た。





🍉「 おい、ヘチャンっ!! 」





『 ごめん、なさい…! 』







無我夢中だった。





訳わかんない。

叶わないってわかってるのに。












『 あなた…!! 』






手を掴んで気づく。





「 !…ヘチャン?? 」






あなたの変わってない可愛さに。







『 アイツはどうした、!…ジェミン! 』





「 ジェミンくん、…もう別れちゃったよ…笑 」


『 …は? 』



「 えへへ、」





あなたは情けない顔で悲しそうに笑った。




アイツ、
俺、お前に傷つけんなって言ったよな…?!







『 ばか、っ 』





【 おーい、あなたいくよー?? 】






向こうの方で女子が
あなたの名前を呼ぶのが聞こえた。






「 ごめん、ね…言ってなくて。
また集まろ!じゃあね! 」







んだよ、アイツ。






俺は今でも好きだな、って思うのに。




アイツ贅沢すぎんだろ…






🐨「 …ヘチャン? 」




『 !…ジェミン、』





🐨「 …遅かったか、笑 」




『 は…? 』




🐨「 んー、なんでもない。また、ね 」






嵐のように去ったジェミンの目元はすこし潤んでて、


俺は悟る。





あぁ、自分らの合意の意思の元、
別れたんじゃねーんだな、って。





またダメだったじゃんか…笑




結局俺はダメダメなままか。







🍉「 ヘチャン! 」







🍉「 やっと見つけた… 」







🍉「 一緒に泣こう。お前には俺がついてるから。」







『 ね、マクヒョン…、』


🍉「 ん? 」




『 俺、なんも変わってなかったよ、
まだガキのまんまだった。
傷ついたことなんて沢山あったけど、
何かを変えようだなんて思ったりしなかった。
…だから、まだ俺小学生だわ、笑 』




🍉「 しっかりしろよ、高校生 …笑 」




『 あー、やば、』





まだまだ子供なんだ





それにいつだって味方がいないとダメみたい。








『 マクヒョン、すき 』



🍉「 !? …無理だからな、却下だぞ?! 」




『 ふふ、分かってるよ。 』





だって俺はまだあなたがすきだもん。






もう事実上終わった恋だけど
俺からしたらまだバリバリ続いてる。





あなた、お前幸せものだわ~、
このヘチャン様に長らく好かれといて
振り向きもしないだなんて。







____ 6月6日。








🦊「 おい主役遅いぞ~ 」



『 なんでこんなの着なきゃなんないんだよ… 』




🍉「 だって20歳の誕生日だからさ。
これくらい我慢しろ笑 」







俺の人脈ほぼ全員に声掛けてできた
俺の20歳の誕生日パーティ。







俺と深く関わってくれた19人の人達

プラス

昔からの人達。






と、





🐨「 おめでと~!! 」



『 ぐえっ、…お前墓場まで呪うから 』


🐨「 えぇ、怖 」






永遠のライバル、ジェミン。








この誕生日パーティは死ぬほど楽しかった。




けどやっぱ足りねーよな。







最後の最後まであなたは
俺になびかなかった。







あー、辛…笑






『 みんな好きだ~!!! 』







ま、俺の中では永遠にあなたが1番だけどね。





相手いなくなったら来いよな。





俺、優良物件だぞ?笑










ま、結果あなたは
いい男と結婚したんだけどね。













↺ Haechan × Jaemin : いつだって ー 14:19






プリ小説オーディオドラマ