―小雪side―
食事を終えた私は、席を立つ時にお姉ちゃんに聞いてみた。
お姉ちゃんは驚いていた。
そりゃそうだろう。
急に妹にそんなことを聞かれたら。
しばらく沈黙が流れた。
やがて
お姉ちゃんは穏やかな笑顔でそう答えた。
―小春side―
食事を終えた小雪から、タクのことが好きなのか、と聞かれた。
急だったので、しばし返事につまった。
やがて大好きだよ。と答えると小雪は
とだけ言った。
その時小雪の顔が悲しそうに歪んだことに
私は気づかなかった。
否、少しばかり浮かれて、気づけなかったのだ。
―小雪side―
お姉ちゃんの返事を聞いた私は、平静を装いながら部屋に戻った。
ベッドに横になり、私は声を殺して泣いた。
雅には心配をかけたくないので大丈夫だといったが、まったく大丈夫ではなかったのだ。
私は知っていた。
拓弥先輩の好きな人がお姉ちゃんだということを。
私では到底敵わない恋だということを。
私は知ってしまった。
お姉ちゃんも拓弥先輩のことが好きだということを。
本宮 小雪16歳。この春、私は失恋しました。
―第1章・完―
―――――✂️キリトリ✂️―――――
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。